Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

技術書、ビジネス書、マニュアルやコンテンツマーケティングなことを書いてみて

Advent Calendar には絶対参加するものかと決めてから数年、とうとう参加することになりました(ウソです)。

さて、はじめてのAdvent Calendar参加は、「編集とライティングにまつわるアレコレ Advent Calendar 2017」 です。

adventar.org

参加している方々が、プロの編集者やライターの錚々たる面々。じゃ、ぼくはどうなのよということで、軽く自己紹介。

HP(ヒューレット・パッカード)でソフトウェアR&D→マーケティングになり、2011年に起業して、現在に至ります。

なぜこのAdvent Calendar に?となるとHP社内でも少し変わった職歴があるので。

HPで働き始めた当初は、開発仕事の他に、マニュアルの翻訳校正(翻訳は翻訳業者が実施)、マニュアルの執筆などをしていました(2年くらい)。そんなことをしていると、いろんなところから、技術書を翻訳しないか?というお誘いもあり、プレンティスホール(USでは名門です)、オライリーなどから翻訳書の出版。オリジナルではインターネットの入門書(そのときの編集者が、このAdvent Calendar を企画したモーリさん)を書きました。さらに、ひょんなことから、ビジネス書の翻訳(前FRB議長 バーナンキの講演録)にも関わり、自分自身の仕事のノウハウをまとめたビジネス書を出版。最近は、IT系のメディアにイベントレポートやインタビュー記事、IT企業のプロモーション記事などを書いています。

そんな感じなので、いろんな出版社や編集者の方々と仕事をしてきました。そこで、いくつか気になったところを取り上げてみます。特にオチがあるわけではありません。

社会人になった90年代のころ、DTPなどが一般に普及し始めたあたりの話から。

当時、HPでは、マニュアル制作には、HPtagというツールを使っていました。

TexユーザーグループにあるArthur Ogawaさんのインタビューに簡単な仕組みが記載されています。

Their SGML-based publishing system HPtag was much like the XML-based publishing systems of today, in use by, for example, the American Physical Society. In the case of HPtag, documents were first coded in SGML, validated, and then translated into TeX for typesetting by the macro package I wrote. HP product manuals of all kinds were produced using HPtag.

HPtagは、SGMLで最初に評価されてそのあと、Texを使って整形されるとあります。彼が話をしているように、HPでは、当時ほぼすべてのマニュアルにHPtagを利用しています。日本語版というか日本語を扱えるようにする開発は、当時の日本HPのエンジニアが渡米して実装しました(所属していた部署のお世話なった先輩)。最終ファイルは、HP製レーザージェットプリンター用(版下にそのまま利用される)に最適化され、そのまま印刷会社に受け渡し、紙に印刷されて出てくるという仕組みです。すべての作業がオンラインで完結するというプロセスが80年代末に完成していました(もちろん時代の流れともに、HPtagは商用のDTPツールへと移行していきます。そのあたりのツールの日本語化というかポーティングの仕事が決まりかけたこともあったのですが、その企業が買収されて、ぼくの仕事がなくなったなんてこともありました)。

この仕組みは、先輩が日本でのマニュアル制作などを行う集まりで何度も講演しているのを知っているので、日本では先端的だったようです。

個人的には、この時代に、一通りのテキスト作成(ゼロからの執筆、翻訳文の校正)、イラストなどの準備、レイアウトの実施から、印刷データの入稿まで実施していました。数十冊と作っていたので、頭の中が、タグだらけになり、プレーンテキストを読むと、自然にタグ付けしながら見てしまう状態(今でいうと、頭がMarkdownで構成されている)。

さて、商業出版の方はどうだったかです。出版社や編集者によってかなり違うやり方をやっていた気がします。

ビジネス書を書くようになったのは21世紀以降なので、技術書の領域になりますが。テキストの納品については、90年代初期は、プレーンテキストでの納品が多かったです。最初の頃は、必ずしもみんながPC持っていなかったこともあったのか、WORDを使っての執筆はしていませんでした。テキストの執筆は、回りを見るとエディターが中心だったと思います。僕はemacsを使って書いていましたが、先輩には、viを使っている人がいて、「すげー」と思ったものでした(viが苦手だったんです)。次に編集者とテキストファイルをやり取りをして、最終的に出版社がDTPに回して、レイアウトされたファイルを編集者が印刷して、昔は郵送されてきて、そこに赤入れをして戻すというプロセスでした。今は、PDFファイルが送付されてきて、PDFファイルのコメント機能を使ってコメントを入れて、フィードバックするというやり方が多いです。

なお、ひどい編集者は、日本語のチェックなしでスルー。DTPは読みにくいレイアウトになっていました。なので、こちらに届いてから、日本語の校正からレイアウトの修正指示をしたこともありました(どっちが編集者か分からない)。

ビジネス書については、WORDを使ってのファイルをやり取りすることが中心でした。

技術書と圧倒的に違う点は、編集者がすべてを書き直す勢いで、文章や構成を変えてしまうことでした。技術書の場合は、ほとんどの文章や構成に手を入れる編集者はいないと思います(いろんな出版社から20冊以上出しているのでたぶんそう。文章を読みやすくするなどはもちろん実施されます。ただ、ビジネス書は80%くらい書き換えるときもあるとか、文章を書き直されるのをいやがっていたらビジネス書は書けないとか、ある編集者は話をしていました)。あとすごく気になったのは、英数字を全角にすることです。こちらが半角(半角全角の定義もありますが)で書いても、戻ってくるのはすべて全角になっています。新聞社のサイトを見ると、URLなどが全部、全角英数字になっているのと同じです。これはものすごく違和感があります。自分の文章を修正されるよりもずっと。

で、最近流行のコンテンツマーケティング分野の話。

IT企業だけでなく多くの企業がコンテンツを自社のWebサイトに掲載して、プロモーションするのが一般的になっています。特に、2010年以降はやっていない大手の企業を探すのが難しい状況になっています。そのため、仕事柄、コンテンツマーケティング支援の一環で、IT企業のプロモーション記事の執筆することが多くなりました。多い月になると月にA4 数10ページくらい書いていたときもあって、ライターが本業か??というころもありましたが、最近はライティングの仕事量は絞っています。

そこで、積極的に使うようになったがGoogle ドキュメントなどのオンライン編集ツールの活用です。編集段階のコメントもどんどんと1つのドキュメントを共有した状態で手を入れていくというやり方です(昔から活躍しているIT企業は、まだまだWORDで履歴オンでファイルをやり取りしています。でもどれが最新ファイルか分からない)。印刷することが前提ではなく、レイアウトはテンプレート化されたHTMLファイルに投入するというプロセスです。弊社では、ぼくが文章を書き起こして、社員が校正や画像選定などをして、HTML化するという作業を繰り返しています。

Markdownなエディターで執筆するというのが、技術書の方向かなと思っていますが、コンテンツマーケティングを実施して行く上で、文章を大量に執筆していくには、関わる人が多くなりがちなこともありますが、参加者のリテラシーが違うということもあり、最後のオンラインドキュメントを直接修正していくやり方が中心になってくるんじゃないかと思っております。

最後に、自分としては、マニュアルを作る仕事は会社員時代に一番嫌いな仕事だったのですが、独立してから、そのころに習ったことでお金をもらっているということに、人生は先が読めないなとも感じています。

では、明日は、kmutoさんのエントリーになります。お楽しみに。