Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

雑誌ナンバーから学ぶ名将のリーダーシップ4つのポイント

本屋さんにいくと、書棚に並ぶ書籍を見て、次のようなことを思った人も多いはず。

  • なぜ、『戦国武将』『プロ野球の監督』にそんなに学ぶのか?

特に、戦国武将には学びすぎだろう、物心ついてから、ずっと、みんな学んでいるんじゃないの?とかおもったりするのは、一般的でしょう w
おそらく、もうすぐ新書で、「なぜ、社長は戦国武将に学ぶのか?」 とか、「年収1000万円以上の勝ち組に見るプロ野球監督のからの教え」などが出版されたりするかもしれません。

戦国武将は、別にして、日本では、昔からスポーツ監督に学ぶマネジメントやリーダーシップに関する書籍や雑誌は多数あります。これは、日本だけの特徴なのだろうかわからなかったのですが、そうじゃないことがわかったので、ちょっとブログに書きたいなと思いました。

文藝春秋社 雑誌ナンバー『名将に学ぶ。〜チームを変革する新時代リーダー論〜 780号/2011年6月9日発売』 の中で、グアルディオラの特集があり、スペインでも同様にスポーツの監督に学ぶリーダーシップといった書籍が多いということがわかりました。

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2011年 6/23号 [雑誌]

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2011年 6/23号 [雑誌]

企業だけでなく、学校・団体・自治体を含めて、よいリーダーが必要だという話題はよく出ます。そのとき、簡単に参照しやすいリーダー像として、スポーツの監督というのがあるのだと思います。というのは、短期間で結果が出ることで評価しやすい場合もある(例: WBC優勝の原監督のケースだと1か月程度の活動)ことや、共有される経験(TVで観戦したなど) があるために、共感を得やすいということがあるのだと思います。

しかし、世の中にリーダーシップ研修がたくさんあるように、簡単に理解し、学べるというものでもないように見えます。そして、その基礎になるリーダーシップ研究は、ビジネススクールができた当初からずっと実施されてきた領域ですので、たった一冊の雑誌から、統合的に学べるわけではありません。(そして、リーダーシップを語る人が、リーダーとして優れているわけでもありません。)

しかし、今回は、ちょっと無理して考えてみましょう。ナンバーの特集から読み取れるリーダーシップの特長は、4つです。

  • きちんと認知・認識する

現在、世界最高の監督と評されることも多いレアル・マドリー監督であるジョゼ・モウリーニョの行動を見てみましょう。

カランカ(注:モウリーニョの右腕)は指揮官の姿勢についてこう語る。
「彼は全てを知りたがった。クラブの構造、人間関係、そして選手のこと。それにこのクラブの文化や歴史などもね。(略)」p.18

クラブの歴史や文化まで調べるところまでやっているかは別にして、現日本代表監督ザッケローニだけでなく、ほとんどの監督に共通するのが、チームのレギュラーだけでなく、控えの選手を含めて、しっかりと観察・認知していることです。いくつもの例が、ナンバーにでています。

企業において考えると、組織のメンバーが何をやっているのかを把握していないマネージャーの人に、評価されたくはないひとも多いはずです。少なくとも、部下が何をしているのかを把握してほしいという要望は強いと思います。しっかりと認識することが大切です。

  • きちんと評価を与える

現在Jリーグで好調な柏レイソル監督のネルシーニョの評価を抜粋しましょう。プロ15年目の北嶋秀朗の言葉から。

「一度使わないという評価を下した選手は、どんな監督でも使わないもの。何か理由をあげて、だからダメなんだという感じで」(略)「去年の僕が使われるようなったのは、夏場を過ぎてからのことですからね。そこで評価を変えられる監督って、なかなかいないんですよ。常日頃から『チャンスは全員にある』って監督は言うんですけど、本当にそうなんです」

ドイツブンデスリーガ マインツ監督トゥヘルに対する評価にも同じようなものがあります。
最初にまず、認知をしておくことがあり、次の段階です。サッカー選手にとって、まず評価とは、やはり試合に出れることです。「本当に力があれば出れるんだ」などという人もいますが、力のある選手は、安心してさぼってしまう場合もありますし、また、いくら努力しても、でれない選手もいます。そのとき、「誰でもチャンスはある」ということをいう監督が多いですが、必ずしもそうではないのは、有名な話です。そこで、きちんと評価をする。これが大切です。

企業において考えると、マネージャーが、実績に応じて、きちんと評価をする(ボーナスの査定や昇給・承認など)ということになります。

  • 責任所在の明確化

Jリーグ サンフィレッチェ広島監督のペトロヴィッチに対するコメントを抜粋します。エースFW佐藤の言葉から。

「ミスをしても責任は自分がとる、とにかくトライしろと言ってくれるので、選手は思い切ってできる。ミスをしたからではなく、ミスを嫌うようなプレーを怒られますから」

この言葉は、プレーのミスに対するものです。違う観点では、上記のモウリーニョが、ミスをした選手に外部からの非難が集中しないように、前面に立って非難を受けることで、その選手に対するプレッシャーを与えないようにした事例があります。結局、監督は、結果がすべてになってくるために、責任は自分がとるしかないという自明な部分はありますが、行動が伴わないと、選手はついてきません。

企業においては、考えるまでもない簡単な話になると思います。

  • 育てる

最後は、育てるです。当然、チームの選手を育てることが一義にあります。それ以外に、後進を育てるということもあります。

今、若手で再注目の監督は、ポルトガルリーグを制したポルト監督ビラスボアスです。彼は、モウリーニョと、ポルト、チェルシー、インテルで6年をともにし、彼の右腕として、さまざまなことを学んだようです。

それ以外では、そのものずばりで「日本をサッカーを発展させた世界の叡智」という記事で、来日した多くの外国人指導者が、技術を教えるだけでなく、「人材」育成も実施していたことが紹介されています。

企業においてのリーダーシップ研修は、人を育てるという目的があると思います。リーダーシップ研究で有名な Mティシーは、リーダーが組織のあらゆる階層に存在し、彼ら/彼女たちが次のリーダーを次々と生み出していく仕組みこそが、組織がずっと勝ち続けていくために必要であるといっており、それをリーダーシップエンジンと呼んでいます。また、誰が言い出したかしりませんが、「社長の仕事は、次の社長を育てることだ」という言葉もあるようです。競争が厳しい現在では、組織が継続的に次代をリードする人材が必要なのでしょう。

最後に、上のことをまとめていて、思い出したのが、「サーバント・リーダーシップ」という概念です。サーバント・リーダーシップを紹介して、終わることにします。(参照; http://www.servantleader.jp/servantleadership/index.html)

リーダーである人は、「まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という実践哲学をサーバント・リーダーシップと言い、1970年ロバート・グリーンリーフによって提唱。

サーバントリーダーシップ 10 の特性

  1. 傾聴 : 人の言うことがきちんと聞ける
  2. 共感 : 同時に共感もできる
  3. 癒し : 本来の姿が取り戻せるよう自他ともに癒すことができる
  4. 気づき : 自他ともに気づきに訴えることができる
  5. 説得 : 支配的ではなく、何か大きな使命や目標を訴える説得力を持つ
  6. 概念化 : 自分の夢がきちんと概念化できている
  7. 先見力 : 現在の事柄について過去の教訓に照らし合わせ将来を予想する
  8. スチュワードシップ : 大切なものを任せて信頼できると思われるような人
  9. 人々の成長に関わる : 一人ひとりの成長に深くコミットできる
  10. コミュニティーづくり: 自らがサーブしてリードできるような、有能な人材を多く創出するような文化を創る

サーバントリーダーシップ

サーバントリーダーシップ

  • 作者: ロバート・K・グリーンリーフ,ラリー・C・スピアーズ,金井壽宏,金井真弓
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2008/12/24
  • メディア: 単行本
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普段は、「リーダーになることないや」と言っている人も、家族がいる人は、「夏休みの家族旅行の決定」や「外食で何を食べるかの選択」など小さいながらのリーダーシップを持たなくてはいけないこともあるはずです。ですから、まったくリーダーにならないというわけでない人もおおいはずです。そのため、リーダーシップについて、少し、考えてみるのも、いいでしょうね。