感想:『普通に働け』(常見陽平 著)
10月は、イベントシーズンでもあり、近年になく多忙だったため、ブログ更新も1ヶ月ぶりです。アクセス数を久しぶりに確認したところ、あいかわらずアクセス数が高いのが、次の2つです。
今となれば、グーグルの採用モデルも他の企業がマネしているので一般的にはなりましたが、採用、働き方には興味がある人が多いようです。また、地方からITエンジニアが消えていく件についても、働き方についての話です。
数年前に流行ったノマド論にせよ、働き方についてのトピックは、興味の引かれるようです。書店を見ても、「働き方」「シュウカツ」「若者論」といった仕事に関する本は大きなエリアを取っています。
しかし、この手の「働き方」本には、極端な話も多く、「あれー」っと思うこともよくあります。
そういう考えを持つ人も、専門家にはいるようで、人材コンサルタントである常見陽平さんが、一般に流布する言説に対して、反論や解説を加えつつ、自分の考えをまとめたのが、新著『普通に働け』です。
日本の雇用・労働をめぐる議論は、エリートかワーキングプアを対象としたものに偏りがちである。そこには「普通の人」の「普通の働き方」が見落とされており、ブラック企業論争やノマド論争で可視化されたのは、私たちの「普通に働きたい」というこじれた感情であった。しかし、「普通の人」とは誰か? 「普通の働き方」とは何か? そもそも私たちは「普通」ということが、実はよく分かっていないのだ。本書は豊富にデータを揃えながら「意識の高い」系言説のウソを暴き、私たちノンエリートのための働き方を考察する。
(ただ、「意識の高い」系といっても、これ自体が一般用語ではないと思います。)
本書で、一般に流布している言説に対する反論に対する例を上げると、「若者は三年で会社を辞める」に対するものがあります。先々週くらいにも、大手新聞が記事していた思います。
そして、これらの記事を読んだ反応は、
- 「三年で辞めるなんて、イマドキのワカモノたは、根性がない」
といったように話は続きます。
これに対して、常見さんは、厚生労働省の調査データを引用して、「昔から、若者は三年程度で会社を辞めている割合には、大きな変化はない」ことを示します。
豊富な資料を使った説明も面白いのですが、働き方というトピックを横に置いても、『CM「消臭力」をヒットさせた鹿毛康司氏との対談』は、興味深いです。鹿毛康司氏は、雪印勤務時代に子会社の牛肉偽装事件が発覚後、信頼回復プロジェクトを担当し、現在はエステー株式会社宣伝部長です。
常見さんの結論は、普通に働いて、「いい仕事をする」ことです。
この結論は、本書を読んでいた頃、参加した神戸大学ビジネススクール(MBA)25周年イベントで、三品 和広 (神戸大学大学院経営学研究科教授)での講演内容にかぶっていて、非常におもしろかったのです。
日本で初めての国公立のビジネススクールであった神戸大学MBAの特徴は、社会人が週末・夜間で通って、修了できるということにありました(今では一般的ですね。当時は、国内にはなかったのです)。フルタイムでなく、働きながら勉強するモデル。これによって、日々の仕事と勉強しことを互いにフィードバックし合って、学び、働くことできます。
その神戸大学MBAでの教育方針が、
「いい仕事をする人を育てる」(三品教授)
というものだいうことを指摘されてていたのです。
もちろん、「いい仕事をする」ためには、スキルアップしたり、継続して勉強するなどの努力が必要であるというこというまでもありません。
両者の考えに共通するのは、
人の働き方には、革命は起こらない
ということだと、ぼくは、思います(インターネットを使って、働き方革命という文脈ではありません)。
個々の基礎力をきちんと積み上げて、企業・上司・周囲が期待する結果を出す、そして、自分も納得できる成果を出す、こういったことができるような人材になることが必要だと思います。
新書ということで、手に取りやすいですし、お勧めの1冊です。
最後に、今年の2月のイベント開催以来、10ヶ月立ちましたが、アイキャリ主催のイベントを開催します。本書にあるような働き方関係では、グローバル人材論も話題になっています。では、本当のところ、グローバル企業で働く人はどういう人なのか? そして、それに付随して話題になる英語にフォーカスして、実施します。
僕以外の登壇者は、現役のグローバル企業で働く人々です。なかなか聞けない内容だと思いますので、ぜひ、ご参加ください。
- 「グローバル人材の今を考える」第1弾: 英語を使って働く・英語を学ぶ
- 日時2013 12/02(月)19:00ー21:00
- 場所 東京都東京都港区北青山2-5-8オラクル 青山センター13F
会場は、日本オラクル株式会社殿のご厚意によりお借りしております。当日は、13Fセミナールームフロアにエレベータで上がってください特別受付ブースがあります。概要オフショアリング、海外進出、海外から事業参入など他の業界に比べて、グローバル化の影…