感想:『2020年 世界経済の勝者と敗者』(ポール・クルーグマン 、浜田 宏一 著)
『2020年 世界経済の勝者と敗者』(ポール・クルーグマン 、浜田 宏一 著)を読了。
ノーベル経済学賞の「クルーグマン」と安部政権の経済ブレーンの「浜田宏一」氏というリベラル派経済学者2名が、米国、日本、ヨーロッパ、中国の経済を対談本となっています。対談といっても、一方の論者が話すページ数は多いので、会話と言うより、一方が講義して、一方が聞いているという感じです。
対談をまとめたのは、クルーグマンの定期インタビューで定評のある大野 和基 氏です。クルーグマンは、長らく所属していたプリンストン大学を離れ、近頃、ニューヨーク市立大学教授になっています。ニューヨーク市立大学教授名義での日本での著作は、はじめてとなるのではないでしょうか? 伝え聞くところによると、ニューヨーク市立大学では、「格差」についての研究をするとのことですね。
浜田先生は、なんと80歳で近頃作曲家としてデビューされています。
クルーグマンは、インフレターゲットを強く主張していたこともあり、金融政策一本槍という誤解がありますが、金融と財政政策をしっかりやりましょうという立場です。
1冊読んでいると、同じ構造、同じ話の繰り返しになっていることに気がつきます。対立軸は、緊縮 対 反緊縮 なのかなと思います。財政赤字があるので、緊縮財政を求める声は、特にヨーロッパと日本で強く、これがうまくいっていないことを嘆いています。
中国については、お二人とも悲観的です。クルーグマンは、以前から、米国リベラル系ロックミュージシャンのように、中国に対してかなり批判的です。この中国の経済状況だと、中国政府が目をそらすために、暴発的に日本と中国と紛争が起こる可能性があるかもと警鐘を鳴らしています。
お二人の話からでは、ユーロ圏については、今後どうしたらいいのかが見えないです。
日本については、クルーグマンは、「今、消費税増税すべきではない」というスタンスは変わりません。女性活躍の支援などをもっということも話をされています。日本は、結局のところ、消費税増税しない、緊縮財政しない、金融緩和は続けるなど、アベノミクスのさらなる推進をといった感じです。
1時間程度で読めるので、通勤電車でさっくりと読むといいと思います。