感想 : 『PK』 (伊坂幸太郎著)
今日の本は、伊坂幸太郎著「PK」です。
ぼくにとっては、00年代以降、90年代にMUST BUY状態だった「京極夏彦」「宮部みゆき」に対応するのが、この伊坂幸太郎です。前者二人は、00年代以降は、買ったり買わなかったりになるのですが(宮部さんの時代物がどうもあわないようです)、伊坂さんについては、出版されている小説は全部読んでいるという状況です。これくらい長くずっと買っている作家は、いません。文体や雰囲気、最後のまとめ方が好みなのでしょう。
伊坂幸太郎というと、仙台在住であることが有名です。そのため、多くの舞台が、仙台やそれを中心とした東北の香りがします。そのため、世間から見ると、震災後のはじめての著作がこの書籍となります。伊坂さんがあとがきに書かれているように、実際にこの中編が書かれた時期は、震災前ということですので、震災にからめた感想ということには、少し当たらないということになりそうです。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/03/08
- メディア: 単行本
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本の紹介は、次のようになります。
中篇「PK」「超人」「密使」からなる“未来三部作”。こだわりとたくらみに満ちた三作品を貫く、伊坂幸太郎が見ている未来とは。
こちらの紹介にある「未来」となっているいますが、特に未来ということが明示されているわけではありません。過去と現在を行ったり来たりしながら、ストリーが展開しています。実際の三編は、共通らしい登場人物はいますが、それが明確に話が展開するわけではありません。だだし、このつながりは、薄いのですが、きれいな糸でつながっています。
共通のキーワードがあるとすれば、「決心」でしょうか。人から脅されたり、選択肢があるときに、どちらを選ぶか。それによって、未来が変わってくるということになります。
伊坂さんの著作は、名作『ゴールデンスランバー』以降は、出来にゆれがでてきていて、ちょっとなぁという本もあるのも事実です。今回の3編についても、『死者の精度』や『終末のフール』のように、短編全部がおすすめですという感じではありません。「PK」は、星5つ、「超人」は、星3つ、「密使」は、星4つといったところです(ちょっと甘い判定です)。例えば、「密使」ついては、設定の説明がかなり込み入っていて、理解しきれない人がいるのではと思ってしまいます。
伊坂ファンなら、買いましょう。伊坂ファンにこれからなるなら、短編集なら『死者の精度』や『終末のフール』あたりから入るのがおすすめです。
なお、個人的には、今のところ、一番好きな本は、『アヒルと鴨のコインロッカー』です。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/12/21
- メディア: 文庫
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