Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

[感想] ユーロの正体(安達 誠司 著)

ベストセラー『円高の正体』の著者 安達 誠司さんの最新作は、正体シリーズ(?) 第2弾『ユーロの正体』です。

この数年、ギリシャの金融危機から始まった欧州金融危機を、ユーロ導入にいたる歴史から紹介する一冊です。

『円高の正体』と同様に、本書も、わかりやくかつ明瞭なロジックで展開されるお勧めの一冊です。本書を読んでの感想は、このままでは、「ヨーロッパの日本化」が起こるのだろうという暗い未来です。日本化とは、91年バブル崩壊に始まった日本の失われた20年のことです(このまま、失われた30年になりかねないところがありますが)。デフレ、円高、失業率の高止まりなど、日本経済が苦しんでいることを、今後は、欧州も経験するのではということです。

ユーロ導入までの歴史は、ぜひ読んでほしいところの1つです。高校の教科書だと、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC) → 欧州経済共同体(EC) → 欧州共同体(EU)の流れと、統一通貨ユーロの話は出ていますが、ユーロ以前の為替、金融政策は、(ぼくの記憶では) なかったと思います。それらの歴史、仕組み、課題が紹介されています。

ユーロ導入当時、「統一通貨は、うまくいかない」という指摘が、当時からマクロ経済学者からされていた記憶が強かったのです。しかし、2000年代は、個人的に仕事が多忙だったため、その後の話は、ほとんど知らなかったので、そこを興味深く読みました。当時は、バブルだったので、ユーロ圏は、経済が好調で、ギリシャの話が出てくるまでは、悪い話もよく知らなかったです。

そして、現在の危機状況。結局、ヨーロッパの長い歴史(政治)が、EU、ユーロというものを生み出す政治的モチベーションであっただけでなく、現在のユーロ危機である状況を解決できないのも、同じく、その歴史(政治)のためなのだろうと思います。例えば、統一ドイツを恐れたフランスとの政治的思惑などです。

詳しくは、シノドス 『ユーロの正体』著者、安達誠司氏に聞く ―― この経済失策がヤバかった!2012 ~ 日欧経済失政レビュー をお読みいただき、興味をもたれれば、書店なり、ネットなりで、手に取っていただければ、損のない一冊です。