Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

トヨタ自動車 豊田社長を成長させた経験

12月6日に、「クラウドフォースジャパン2012 」の特別セッションに参加してきました。当初の目的は、リーダーシップのビジネス書が日本でも好調な コリン・パウエル (元米国務長官) 氏を見たかったからです。

しかし、参加した後の感想は、トヨタ自動車 豊田章男社長の実体験についての話がとてもおもしろかったです。

リーダーシップを語ることがセッションの目的でした。豊田社長は、セッション当初は、(おそらくスタッフが作った)メモを片手にして、セールスフォースCEOの質問に答えていました。ここのくだりは、はっきいって、かなりおもしろくなかったのです。実際に、知人に聞いても、同じような感想を持っていました。

しかし、後半、内容が、俄然興味深くなりました。それが、手元のメモを見ずに、数年前に起こった米国での公聴会での経験を話はじめたところからです。

一部、ニュースサイトでも記事になっています。

さらに「その時に自分自身に決めたルールは、誰のせいにもしないということと、対応が遅いとか、のろまという責めは甘んじて受けよう。だけど嘘つきとか、ごまかしてるということに対しては徹底的に戦おうということを会社の中に示せたと思うし、全世界のお客様にも示せたと思っている」と述べた。

このようにまとめられていますが、ぼくにとっては、興味深かったのが、この直後の発言です。それは、3.11 大震災直後に、会社で指示を出したときのくだり。

人命第一。次に地域の復興・復旧が第二。生産活動の復旧がその次。とプライオリティがぽっと口からでました。そして、もう一つが、本社報告のための、会議もいらないよ。そして、現場で、即断・即決・即時実行してください。ただし、みんながよかれと思ってやっても、結果がそれに伴わないこともある。そのときには、「ぼくが責任を取るよ」と。というのが、ですが、やはり、公聴会で、私が経験させていただいて、そういう風(注:リーダーとは、決定し、責任を取る)に自分も成長できたのかなと

公聴会に参加するときには、新米社長であり、会社も赤字状態であったため、「まだまだ自分は」という実感があったようです。その後、公聴会での厳しいやりとりがあり、それを乗り切ったという経験が続きます。このあと、大震災という出来事があり、そこで、自分が決めたことを今から振り返ると、公聴会の経験が、自分を成長させたんだということを実感したということになります。

すでにシニアな年齢である豊田社長が、公聴会という経験を超えて、成長することができたということを、多くの人の前で、自己開示できて、話をするということをに立ち会えて、非常に感激しました。

ビジネスパーソンならよく知っているように、「年を取ったら成長しないから、あまり役に立たない」といったことを、特に、若手・中堅クラスから、シニア層を批判する文脈でなされます。しかし、発達心理学や経営学でのキャリア理論などでは、「人はいくつになっても、成長する」ということが、主張されています。今回の豊田社長の経験は、そのような成長するということの事例の1つではないかと思いました。

企業のキャリア、リーダーシップの第一人者である金井先生(神戸大学)は、このような成長する出来事を、『一皮むけた経験』という言葉を使って、紹介されています。僕にとっても、振り返ってみれば、いくつか、一皮むけた体験がありました。その経験をしているときには気がつかないのですが、終わってから、「少し経過し、振り返ってみるとわかる」というそんな経験です。

みなさんも、そんな一皮むけた経験はないでしょうか?

この公聴会から、成長したという豊田さんのお話は、YouTubeにアップロードされています。たった6分ですので、ぜひ聴いて欲しい内容です(動画ではないです)。

また、金井先生の『仕事で「一皮むける」』という本も、実際に多くのビジネスパーソンを調査した結果がまとめられたもので、おもしろいので、手にとってもらえるといいと思います。