感想:消費増税でどうなる? 日本経済の真相 【2014年度版】
本書は、2014年度版とタイトルがついている。というのも、2012年にベストセラーになった『日本経済の真相』から2年たった第2弾という位置づけだから。
著者 高橋洋一氏は、元財務省キャリア官僚であり、第1次安倍内閣の内閣参事官を勤めてた後、官僚を辞めて、現在、大学教授。
本書の構成は、俗論に対して、高橋教授が一刀両断するというスタイル。俗論として、次のようなものが取り上げらます。
- GDPが増えても、経常収支は赤字に転落。国力が落ちている。
この半年のアベノミクス関係で話題といえば、経常収支が赤字になったのは、日本が稼ぐ力が落ちたからだというもの。
高校でならった社会科でも、経常収支が国の稼ぐ力であるとは、教えていない
にもかかわらず、新聞からテレビまで、解説者がそんな解説(例: 東京新聞
東京新聞:貿易収支→輸出入の差額 経常収支→国の「稼ぐ力」:経済:経済Q&A(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013102202100003.html) をしています。ここで、高橋教授の特長ですが、OECDなどのデータを使って、グラフ化して比較します。そうすると、経常収支が赤字でも、成長している国は多数あることがわかります。
このようなよく流布されているが、本当か?ということを読みやすい文章と少しグラフを使って紹介する書籍です。
これから半年の間で話題になるのは、消費税が8%から10%に上げるかどうかです。この秋に、安倍総理が最終決定することになります。決定するときの景気を総合判断して決めるという法律になっています。
しかし、先日発表された2014年4月家計調査(総務省)を見ると、97年消費税アップの時よりも、今回の方が落ち込みが深刻です。
2014年4月家計調査(総務省)。2人世帯の実質消費支出は前年同月比4.6%減、季調済み前月比は13.3%減と大幅な減少となった。図表は実質消費につき97年増税時と今回の動きを比較したもの。今回の方が深刻である。 pic.twitter.com/js6h4Z8IOT
— 片岡剛士(Kataoka Goushi) (@goushikataoka) 2014, 5月 30
本書では、高橋教授は、消費税アップのためには、「景気が悪くなったのは、消費税のせいではない」というごまかしが増えてくるだろうと予測しています。一番簡単のは、『海外』から何かしらの材料を持ってくることだとしてきています。
これから、いろいろな言い訳が出てくるでしょうが、いろんなメディア、言論人などを通じて、10%は必須だという運動が今回も繰り広げられるでしょう。
そういう動きに惑わされないための、ものの見方の1つを紹介するのが、本書です。当然、高橋教授の意見に賛成しない人もいるでしょう(ぼくは、消費税アップは今ではない。2,3年待ってからという意見)が、簡単に読めるので手にとって欲しい本です。
最後に、自身のマクロ経済に対する感想に近い言葉があったので引用。
高橋教授は次のように述べます。
「経済に感情はいらないのだ」
今のアベノミクスの金融緩和(ぼくは、第2まだしも、第3の成長戦略には期待していないのですが、メディア的には、これが一番大切なっているのは。。)に対する評価が、『感情』か『モラル』で評価している人が多いのが残念です。
通常は、1+1=2 だけと、日本はモラルがよくないので、1+1= 1 の特別法則を用いますみたいで。。
増えた税収をどうするか(公共工事? 再分配? )ということを、議論して欲しいと思います。。