Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

アイビーリーグで戦っていける英語力のつけ方: 英語塾Logos

生徒には、アイビーリーグで、戦っていけるだけの教養をつけていきたいです

初夏、土曜日の昼下がり、落ち着いた通りのカフェにて、このように語るのが、自由が丘にある英語塾Logosを主催する斉藤淳先生だ。

今回、ぼくたち「アイキャリ」チームが訪問したのは、英語塾Logosだ。アイキャリとは、IT業界で働く方々に対して、自分でキャリアをデザインしていくための情報を提供していく活動を実施している任意団体。メンバーも、IT業界で働く人々だ。今まで、オープンソースカンファレンスでパネルディスカッションを実施したり、サイバーエージェントの人事本部長を訪問し、レポートするなどの活動を行っている。

私たちが所属するIT業界は、ビジネス、テクノロジーの中心が米国のため、最新の情報を得るには、英語を利用する以外に方法はない外資系だけではなく、米国から来日する多くのキーパーソンが、日本企業を訪問し、重要な会議を行うこともよくある。そして、最近は、インドを始め、オフショア開発が一般的になるにつれ、海外とのコミュニケーションも英語に頼らざるをえない。そして、さらに、日本企業が海外進出への勢いを強めるのと同じく、国内IT企業の海外進出が活発になっている。

このような背景から、世間で、「グローバル人材には、英語が必要」ということが言われる以前から、英語に対する重要性は高い業界であった。しかし、多くのビジネスマンやエンジニアにとって、英語はプレッシャーになることが多く、必ずしも、自分の思うようなコミュニケーションができず、悩みを抱えたり、コンプレックスを持っている人もたくさんいる。そして、子供を持つ親にとっては、自分と同じ苦労をさせたくないということから、英語に対する悩みを子供には持たせたくない思っている人も多いようだ。

そのため、自分のキャリアを考えていく上で、英語というスキルは、欠かすことのできない重要なコンポーネントだと考え、何か役に立つ情報を提供できないかという問題意識を持っていたところに、この春、日本の英語教育市場に参入した「英語塾Logos」の指導理念、方針を知る機会があり、訪問することになった。

英語塾Logosを主催する斉藤淳先生は、この春まで名門イェール大学助教授を勤めていた経歴を持つ。上智大学外国語学部英語学科卒業(1993年)。エール大学大学院政治学専攻博士課程修了、Ph D(2006年)。 先ごろ、帰国され、故郷の酒田と自由が丘で英語塾を始めることなった。

私は、今年の1月に帰国中の斉藤先生とたまたま名刺交換をする機会があり、連絡先を交換していた関係から、今回の訪問へとつながった。

訪問させていただくにあたって、まず、英語塾Logosの指導方針について、インタビューを実施させていただき、その後、実際の授業を見学することになった。


-英語教育の目標について

日本で学ぶ中学生が中学一年生から高校まで学べば、アイビーリーグ(大学)に受かるということを目標にしています。中学三年生くらいまでには、日本の標準的な高校英語のカリキュラムを終らせます。目安として、中三終了時までには、英検準一級くらいのレベルに。それからは、アイビーリーグで戦っていけるだけの教養を培う、その材料と場を提供していきたいと思っています。

-日本の英語教育について

日本の英語教育は、正直言ってうまくいっていません。もっと効率的に、集中的に、学ぶ方法はいくらでもあると思います。当塾では、短期間で成果がでることを目指しています。理想のモデルとしているのが、イェール大学の語学の授業ですね。例えば、日本人の院生が、最初から何の基盤もない状態で、外国語の入門のクラスをとって、1年後には、その国の映画を見て、60%くらいは、わかるレベルに到達できます。

(イェール大学の語学の授業では)1時間の授業が、週五回あります。それに加えて、予習と復習。しかも、その国の言葉を話すランゲージテーブルというものがあり、ランチのときには、その応用の練習ができるようになっています。そういう環境に、夏休みの現地研修を組み合わせるということを行っています。それを1年、2年続けるとかなりうまくなってい行きます。

それに比べると、今の日本の語学教育は、成果が乏しい。だったら、イェール大のやり方のマネをして、日本向けにアレンジすれば、成果がでるのではないかという発想がありました。

イェール大で語学の授業を取った日本人留学生が、帰国するときに、「自分の英語学習は、なんだったんだろう」と、つぶやくのを何人も見てきています。それくらい、語学の教え方は、その教授方法さえ工夫すれば、うまくなるんですよね。日本人が語学がヘタと言うより、語学の先生が教えるのがヘタなだけなのではないかと思っています。

ただ、日本の中高生は、残念ながら、イェールと同じ語学の学習環境にはなく、学校の先生も英語の教授法を知らない。外国語の教授法を知らないで、教えている。最近は少し良くなったときいていますが、まだまだ、英文学をちょっとかじったと言うだけで、外国語を教える技術や理論を持っていない先生が大勢います。


-Logosでの教育方法は?

ネイティブが書いた文法の教科書を丁寧にしつこく利用しています。イマージョン・プログラムで勉強するという方法もありますが、うちに来ている生徒が週に五回通塾して、イマージョンするというなら成果があると思いますが、週1回通学して3時間の授業では、大きな期待はできません。代わりに、日本人の先生が日本語で文法を説明して、ネイティブの先生が練習をするというチームティーチングを主体で組み立てています。

-アイビーリーグで戦えるくらいの教養というのは?

リベラルアーツをやろうと思っています。(私は)TOEFLで満点を取っている人を何人も知っていますが、著者が高く評価されて賞を取ったり、外資系で流通業界の役員をやっている人たちです。彼らは、決して長期間にわたって受験勉強をしていたわけではありません。専門的な仕事をする、あるいは、専門的な研究をすることで、培われる英語力というのがあるはずです。反面、過去問をいくら解いても、箱庭をいじっているに過ぎません。
そういう意味では、Logosは、英会話スクールではありませんし、受験予備校でもありません。

- 生徒のモチベーションはどうキープするのか?

生徒のモチベーションを保つには、難しい。家族の方の支援も必要です。家庭ではこういうことをしてほしいというセッションも、最近持ちました。

-こういうことというのは?

(ネイティブが吹き込んだ)CDを配って、家庭で繰り返し聴いてもらっています。ナチュナルスピードで聴き取り、スロースピードで聞いてそのまま音読、そして、書き取り。このセットメニューを週五回実施です。 もちろん、それだけだと退屈なので、注意しないといけません。発想としてはピアノの練習です。家での練習は、スケールで単調になりがち。それでも発表会があるから、モチベー ションが持てる。英語学習も家庭では単調な練習を繰り返す。それでも授業が発表会にあたり、そこで日頃の練習の成果を披露する。教える方もそのように工夫していますので、なんとかがんばってほしいと思っています。

-さらに具体的な教材を教えてください

ケンブリッジ大学出版会の文法問題集を解いて、他に読解の教材を音読しています。最初に取り上げる読解教材は、Dr.Suessです。アメリカで幼少期を過ごす人は全員読んでいると言っても過言ではありません。これを4月に英語始めた中学一年生向けに使っています。仮定法や過去形も出てきますが、習っているかどうか気にせずにやってもっています。学校のカリキュラムにあわせると、量をこなせません。むしろ大量に読んで音とリズムに慣れ、あとで文法を説明したときに理解できるようにイメージのストックを作るようにしています。


イメージと一緒にボキャブラリーを増やす必要があります。人間の記憶の八割は、画像です。画像を使わない語学の学習法は、本来考えられません。その点で今の日本の英語教育はすごく非効率なことをやっています。人間が自然に母語を習得することと、相反することをやっているのが、日本の英語教育です。経験や状況のストックがないのに、言葉だけ学ばせるというのは、本来ありえない。状 況があって、それに言葉がついてきます。赤ちゃんが言葉を学ぶ過程を良く考えて頂きたいです。アメリカや英語圏で暮らす背景知識も何もないのに、単語と文法を与えて、そこから演繹的に状況をひねり出すような教え方をしている。つまり数学を教えるように英語を教えています。これではパズル解きの問題はできても、言葉として使いこなせるようにはなりません。


英語の受け答えは、瞬間英作文です。それができるための準備として、毎週英作文の課題を20個くらい渡して、やらせています。今は、20個の日本文を与えて、それに対応する英文を書いてくるところから始めています。センテンスストラクチャーをきちんと固めておく時期なのでやっています。書くとB5の用紙が一杯になる程度の分量です。この課題をこなすのにだいたい40分くらいかかっ ているようです。

順番的には、ディクテーション(書き取り)をして、問題集を解いて、作文に行く。

既に何年か日本の学校で英語教育を受けてきた生徒は、「アンラーニング」をしなければならない点で大変です。音読をやらないといけないと言っても、「はぁっ?」と言う感じだからです。また高校生ぐらいになると、「うちは、和訳しませんよ」といっても、やっぱり落ち着かない生徒が多い。

通訳できる人は翻訳もできますが、翻訳できる人は、通訳ができるわけではありません。Logosは、通訳者のトレーニングをしても、翻訳者のトレーニングは実施しません。

-クラス学習と人数について

日本の生徒は、大人数での指導に慣れていると言えます。また、できる子をみて、刺激をうけて引っ張られることも多いのです。3、4人の規模だと逆にだれてしまいます。教材に投資し、しっかりしたカリキュラムを組んで、その路線をとっていけば実力が伸びる仕組みを整えという意味で、クラスの人数は、20人くらいが最適な規模だと思います。これ以上の人数だと、個々の生徒が抱える問題、例えば発音や作文などを丁寧には見てあげられません。一番イイ規模だと思っています。

個別に対応していこうということは、結局内容で妥協するということです。逆に成果がでないということにもなります。生徒を乗せていった方が伸びます。



さて、ここで、実際の授業を見学させていただいくとになった。

現在、講師は、インターンシップで来日中のMITの学生を含めて、ネイティブが2名、日本人が2名という構成になっている。ネイティブが文章を読んで、それを生徒に読ませる。発音が悪い場合は、発音方法を含めて、繰り返し、発声させる。ネイティブだと、日本人にどのように発音するかを説明しにくいところを、日本人講師が、日本語で、舌と口の使い方、声の出し方を繰り返し、繰り返し、熱心に教育する。参加していた生徒の発音が、みるみるうちに、修正されていくのを目の当たりにする。

読解に入る。読解といっても、ネイティブのリズムと発音で、文章を読むことになる。和訳をしているわけではない。生徒が、文章を理解した上で、読む練習を家でしてきているので、感情のこもった発音になっている。もちろん、初見となる次回の予習部分を読ませるときには、発声が詰まる生徒も多い。ここも、一つ一つ丁寧に発音やリズムを修正していく。

この時間を利用して、ネイティブの一人は、宿題の英作文をレビューして、授業が終わる前に、講評付きで、解答する。実に時間を効率的に利用している。

次は、英語塾らしく、ケンブリッジのグラマーの教科書を使って、文法を「日本語」で、日本人講師が丁寧に教えていく。ネイティブには、説明しにくい内容を、論理立てて、教育する。

そして、最後に次回の確認をして、終わりとなる。なんと、休憩なしに、3時間ノンストップだ。当初、授業見学するときに、休憩なしで3時間ということで、どうなるのだろうと不安があったが、先生も生徒もすごい集中力でこなすことには、大いにメンバーも感嘆した。

メンバーと食事をしながら、この日の英語塾の方針、内容を話し合った。結論としては、「この方法についてこれれば、間違いなく、高校を卒業することには、英語をかなりマスターしている」ということになった。そして、どこかの機会に、アイキャリとして、英語についてのセッションをセミナーなどの形式で実施したいということも合意した。

個人としては、社会人向けにも、同様の方法に近いモデルで、英語力をアップさせる方法があるだろうと思った。また、ご子息をお持ちの方には、ぜひ、この英語塾への入塾を推薦したいとおもいながら、帰宅したのだった。


4時間という長い時間をいただいた斉藤先生ならびに講師先生一同、そして、もちろん、見ず知らずの大人に囲まれながら、授業を見学させてもらった生徒の皆さんに感謝します。