グーグル社の採用・評価方針やっぱりユニークね
先日、日経ビジネス主催「働きがいのある会社」のつくり方 東京編に参加してきました。働きがいのある会社とは、毎年、米国フォーチュン誌に毎年掲載されるランキングです。Great Place to Work® Institute が、経営者と従業員の信頼関係、仕事への誇り、職場の連帯感など従業員と会社の双方に対して、調査し、選出したものです。日経ビジネス誌では、その日本版ベスト30社を2012年1月23日号で発表し、その中で上位企業数社に講演していただくセミナーが、本セミナーになります (http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbsemi/gp/120425/) 。
当日の講演企業は、働きがいのある会社1位のグーグル株式会社、トップグループに位置するアメリカン・エキスプレス・インターナショナル、株式会社ワークスアプリケーションズ、アサヒビール株式会社、株式会社ディスコでした。その中でも、やはり気になるところはといえば、グーグルかもわかりませんので、一部講演をメモベースですが、紹介します(資料が配付されていなかったので、手元のメモベースです。よって、一部間違いがあるかもしれません。文責はあかいです)。グーグルの採用方針や、あまり聞くことがないだろう「リストラ」の話もQ/Aで聞いてみました。
講演者は、代表取締役 有馬誠氏。グーグルでは、数年前に、全世界の現地法人社長制度を廃止しています。
- 米グーグル日本法人、社長職を廃止 世界一体経営を強化
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819696E3E0E2EA808DE3E0E2E6E0E2E3E28698E2E2E2E2
各事業ごとの責任者が、代表取締役(複数)として活躍するモデルです。
当日の講演は、グーグル社の事業内容などの紹介から始まり、彼らの企業としての価値観( Google の理念 https://www.google.co.jp/intl/ja/about/corporate/company/tenthings.html ) を紹介されました。
さて、本論です。有馬氏の話で興味深かった点をいくつか。
1つ目は、採用基準について。上でリンクしたグーグルの価値観に合致する人を採用するという方針です。そのためには、採用に妥協しないということが約束の1つだそうです。その採用基準は、以下でした(メモなので正確ではありません)。
- あなたより優秀な人を採用すること
- すばらしい候補者に会えたときのみ採用すること
- 物事を成し遂げることができる人
- 周りに良い刺激を与え、チームワークできる人
- チームや会社ととともに成長できる人
- 着眼点や才能がユニークな人
- 倫理的であり、オープンに周囲と交われる人
- 製品、サービス、企業文化に付加価値をもたらす人
- 熱心、自発的、やる気のあふれた人
やはりユニークなのは、1番目の「あなたより優秀な人を採用すること」という項目ですね。通常外資系では、採用はヘッドカウント(採用枠)を持っている部の責任者が決定します。そのため、自分よりも、優れた人がやってきたら、自分のポジションが危険だと思ってしまうことがあり、優秀でない人を取ってしまうという恐れがある場合があります(滅多にないのですが。。)。そういうことを避けましょうということですね。その他の項目は、他の企業でも、採用するときに参考になる内容だと思います。
このようにして採用した社員は、グーグルにとって、最重要資産という位置づけとしているそうです。
そして、もっとも大切な社員にベストな環境を提供することを考えているそうです。
その一例が、無償のカフェテリアなどとして具現化されているそうです。そのようにすれば、社員はすばらしいパフォーマンスを発揮するという考えです。ぼくが勤務していたヒューレット・パッカード社は、シリコンバレーを創った企業として知られていますが、その創業者の理念に近いなと感じました。その理念とは、「人間は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものだ」というものです。(参考→ 「コミュニティへの参加は社員と企業の信頼の下に」 @IT自分戦略研究所 http://jibun.atmarkit.co.jp/lcom01/rensai/candc04/candc01.html )。
グーグルもシリコンバレーにある企業です。シリコンバレー的な考えなのかもしれませんし、そうでないかもしれません。
さて、そのような社員に対して、モチベーションを保つために、さまざまな仕掛けが行われています。いわゆるReward&Recognitionです。当然、教育(e-Learningが多い)には力をかけますし、成果を達成した場合、社員から、お世話になった社員に達成の感謝を示すためのアワード(200ドル)を送ることができます。
また、毎週金曜日は、オープンコミュニケーションとして、パーティというかイベントを開催し、経営陣(創業者など)を含めて、多くの社員が参加するそうです。経営陣は、会社の方針を説明し、社員はそれらに対して、自由に質問するということが実施されているそうです。(以前紹介したスティーブン・レヴィのグーグル本 http://mktredwell.hatenablog.jp/entry/2012/03/26/001018 でも記述されていた中国問題の対処について、社員に語られたのもこのセッションですね。) 経営者にとって、一番大変なとき、あるいは、一番聞いてほしくないことを自由に聞けるということは、非常に大切だと思います。今や数万人の社員を全世界で抱える企業が毎週やり続けていることに感嘆します。
もう一つユニークな点は、社員は自分のマネジメントを評価できるようになっていることの項目です。米国企業では、360度評価やフィードバックを取り入れていることがほとんどです。その評価項目の中に、部下から見て、「マイクロマネジメントをしていませんか?」というものが入っているとのこと。マイクロマネジメントとは、仕事の一つ一つを、「これはやったか? いつまでやるんだ? レポートを早く書け」とか細かく管理することを指します。はっきり言って、部下から見れば、一番ウザいと感じるマネジメントですね。こういう管理職を除外していきたいという気持ちが表れている評価項目です。(本当に、毎週のようにチェックされると大変です。ストレスも大きくかかるので)。
最後に、Q/Aタイムがあったので、質問しました。
採用時には、グーグルの価値観と採用方針にあっていても、入社してから、結婚したり、子供が生まれたり、家を購入したりするなどの転機があったりすると、人は、保守的に考え方が変わってきたりして、パフォーマンスが低下する場合もあるはずです。その場合は、どのように対処されているのでしょうか?
有馬さんの回答は、「そういう人がいるのは事実です。その場合は、ワンツゥワンでの面接を実施し、どのようにパフォーマンス向上を図るかということを、話し合います。それを定期的に実施することで、改善を図っていきます。」とのことでした。
このあたりは、なかなか聞けない話なので、回答いただけて、うれしかったです。