Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

感想:『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(井上智洋 著)

『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(井上智洋 著) を読みました。

会社で機械学習を使った製品をリリースしたこともあり、また、大学の卒論のテーマが「ニューラルネットワーク」ということもありなどで、人工知能関係の書籍や記事を読むことが多いのですが、その中でとても面白かった一冊です。ただし、1点よくわからなかったことがありましたが、それは後半に書きます。

井上先生は、現在、駒澤大学経済学部専任講師。博士(経済学)。昨年、とあるイベントで同席させていただき、知己を得ることになったこともあり、本書のその流れで購入しました。彼は元Java研修講師 (書籍『新しいJavaの教科書』などを執筆) であり、その後マクロ経済学者として転身をしたという、ぼくが知る限り、彼しかいないキャリアになっています。

本書についての概要をアマゾンから引用すると以下になります。

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書)

「AIが発達すると、2030年以降には人口の1割しか働かない世界が有り得る――!?」 そんなショッキングな推計をするのが、経済学から見た人工知能研究の第一人者・井上智洋氏です。失業した人類はAIに働いてもらって遊んで暮せるのでしょうか? はたまた、一部の富める人と貧しい労働者との格差が広がる悪夢が訪れるのでしょうか? 今後の経済の未来について、技術の紹介から経済の分析まで、優しい語り口でお答えします。


人工知能のテクノロジーの変化として、2つの切り口を出しています。一つは、ある作業に特化した人工知能技術 (分かりやすい例では、碁を行うAlphaGOなど)と、汎用的に人間が行うことをいろいろとで行える汎用型人工知能に分けて議論を進めます。前者は、雇用という観点から見ると、AIで仕事がなくなるとというほどの大きな影響はないだろうとしつつ、汎用型人工知能が立ち上がると、雇用が一気になくなっていくと論じます。ざっくりと1割くらいの人以外は働かない状況だということだそうです。

そして、特化型人工知能→汎用型人工知能への変化は、2030年に設定していることもあり、書籍のタイトル「2030年雇用大崩壊」につながります。

さて、本書のキーワードの一つに「技術的失業(technological unemployment)」があります。技術的失業とは、人間が創出する技術的なイノベーションによってもたらされる失業を意味します。例えば、自動改札機が普及したおかげで、改札で切符を切る駅員さんはいなくなりましたし、パソコンが1人1台の環境となったために、キーパンチャーといわれる職はほぼなくなっています。

しかし、技術的失業があったからといって、別の新しい仕事が生まれたり、あるいは以前からある仕事でももっと需要が大きいと業種があったりしますので、必ずしも、技術的失業が生まれることが、失業者が増大していくという訳ではいままでありませんでした(例えば、30年ほど前までは、ウェブデザイナーなどは、ほとんど存在しない職種だったりします)。

しかし、汎用型人工知能が立ち上がるにつれて、「1割しか仕事につけない」という予測を立てています。その1割の仕事とは、マネジメント・クリエイティブ系の職業と、対人サービスの職業としています。

そのような状況下において、対策は、ベーシック・インカム(BI)だと主張します( BIと最初に見たときに、AIとBIが並ぶと、業界的には、Business Intelligenceだと思ったのですが、そちらではなかった)。BIとは、配布条件なし(しがらみや査定などなしに一律ですべての国民に現金を配る)に現金を配る再分配政策です。それをモデルを使いつつ示しています。

ここで、彼のキャリアである、元々ITエンジニアであったことと、今、経済学者であることが融合することなります。

さて、何が疑問だったかというと、「1割しか仕事につけない」として、あとの9割が何をしているかが、現地点のぼくの想像力ではわからないのです。9割の人がふらふらと無職でいる状況で、1割の人が働き続けるという未来図です。おそらくそういう状況だと、キャリアクライシスになった中高年の男性が、メンタル不調になって、BIでお金をもらったとしても、あまりいい社会環境が見えません。

BIで最低限の生活がおくれるとして、そういう未来図はどういったものになるでしょうか?

最後に、人工知能本は昨今はやりですので、いろいろな本を読みたいと思うひとも多いかと思います。その1冊として手に取ってみることをお勧めします。