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Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

感想:「セラピスト」(最相葉月著)→今のところ今年No.1

「セラピスト」は、最相葉月さんのひさびさの新刊。といっても、すでに出版から半年が経過(忙しくて、積読状態だった)。最相さんの本は、話題になった「絶対音感」からずっと、ぼくが数すなく購読しているノンフィクションライター。

感想は、今のところ、今年No.1 です。

書籍紹介にある、「二人の巨星、故河合隼雄の箱庭療法の意義を問い、精神科医の中井久夫と対話を重ね、セラピストとは何かを探る。膨大な取材と証言を通して、病との向き合い方を解く書き下ろし大作」というのが本当にぴったりの大作です。

本書は、河合隼雄先生、中井久夫先生を軸に、日本のカウンセリングの歴史を紹介しながら、カウンセリングにかかわるいろいろな問題や課題を紹介します。

執筆にあたって、最相さんは、心療医療を学ぶために大学院へ半年、民間研修機関に4年間通い続け、臨床心理士の資格をとれるだけの勉強を重ね、「それだけやって初めて専門家の方に質問できるんです」とインタビューで答えています。最相さんは、カウンセリングに対する疑問をかなり強く持っていたのでしょうが、本を書くためにそれだけの努力をなぜ続けたのかという動機についても、本書の最後に語られています。

彼女は、最初のほうで、カウンセラーは、自分のことをよく知らないといけないということに疑問を提示しします。

実は、ぼくも、キャリアカウンセリングを勉強し始めた当時(3年ほど前にキャリアカウンセラーの資格を取得)、まさにその疑問を持っていました。これについては、ぼくは、今も「なぜ」という問いには、明確に答えられません。

参考になるなとおもった経験では、先日、某大手グローバル製造業人事取締役の方の講演を聞く機会があり、「良い人事になるには、どうしたらよいかという質問を聞かれますが、それには、自分をもっと知ることです と答えています」という言葉がありました。

他人をすべて理解することはできないけれど、自分のことは、知ることができるでしょうと。そして、自分を知り、自分がどういうときに満足したり、満足しなかったり、モチベーションを感じたり、感じなかったりなどをしっかりと理解していくことで、人事として、従業員をサポートするときに役に立つでしょうという趣旨だったと記憶します。

では、彼女の回答は、どうなるのでしょうか? その回答は、最後に語られます。

勉強にもなるところもあったり、また、とても、感動するところも多い本です。人の気持ちをわかるとはどういうことなのかを、本当に感じさせてくれる本です。

後半に、現在、治療を受けるクライエントが訴える(じつは、具体的に訴えることも難しいそうですが)が変わってきたという話があります。過去何度か変化があるそうです。例えば、バブル景気が始まった頃。そして、今増えているのは、2000年くらいから増えてきた20代、30代の方々の悩みだそうです。

デフレ経済に突入して、自殺者が2万人台から3万人台にいっきに1年で上がってしまったのが、そのころです。マクロ経済の影響が、ここのミクロの個々人のこころに大きく影を与えてしまう、そんなことも感じました。

カウンセリングの歴史を紐解いていくとき、その流れの一つに、職業支援(キャリアカウンセリング)があります(本書でも少し解説があります)。そういうこともあり、キャリアカウンセリングの技法には、本書で紹介されるカール・ロジャーズの来談者中心療法(Client-Centered Therapy)が、いかにして日本に紹介されて、ブームになっていったかが紹介されていて、社会背景も含めて、とても参考になりました。

心理療法(臨床心理士)と精神療法(医者)によるアプローチの違い、クライエントが増えすぎて、昔のようにじっくりとカウンセリングできなくなってしまっている現状なども、事例通じて紹介されています。

大学時代、当時から当然、超有名教授であった河合先生の授業は、専門課程ではない受講できないので、授業を受けてみたかったのですが、見ることができませんでした。本を読んでも全然わからず挫折した思い出もあります。興味を持ったのは、NHKでインタビュー番組を大学時代に見たことです。そのときも語られていた箱庭療法の紹介と、河合先生亡き後の箱庭療法の現状も紹介されています。

ぜひ、夏休み読んでほしい一冊です。


(本筋とは違うのでは、知識の輸入段階で、おそらくClientというのをローマ字読みをしてしまって、「クライエント」と訳語をつけてしまったので、カウンセリングにかかわる人たちは、クライアント ではなく、クライエント と呼ぶのにも、疑問があります。)