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Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

感想:IT企業という怪物 組織が人を食い潰すとき

『IT企業という怪物 組織が人を食い潰すとき』(今野 晴貴 , 常見 陽平 著) を読みました。

IT企業に勤務していた経験もあるし、今も、その周辺で仕事をしているので、気になった本書を手に取りました。作者は、昨今のブラック企業批判の動きをリードしたNPO POSSE 代表 今野 晴貴さんと、人材コンサルタントである常見 陽平さんです。

お二人とも、昨年から活躍が拡大しているので、著作、雑誌等で読んだ人も多いと思います。ぼくも、数冊手に取ったりしています。

ベストセラーになった今野さんの『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』に対する感想は、こちら http://blog.mkt-i.jp/entry/2013/01/23/134205 です。また、常見さんの『「意識高い系」という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー』の感想は、こちらhttp://blog.mkt-i.jp/entry/2012/12/28/133220 です。

『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』では、ブラック企業として多い産業に、サービス業に並んで、IT企業が取り上げられていました。その「IT企業」にフォーカスしたのが本書という説明になっています。が、中身を読むと、半分くらいは、フリーランスやノマドのような話が多くて、IT企業に特化したのは、半分くらいという印象です。そこでも、特に、IT企業の話題と言えるのは、常見さんのIT業界のシューカツ事情を説明した章が中核と言えるでしょう。

IT業界の人員構成のおよそ8−9割程度が、エンジニアです(IPAによる白書参照)。そして、その中核を占めるのが、プログラマーです。転職サイトやフリーランス募集企業の募集を見ても、ほぼエンジニア、それも、開発者・プログラマーが中核です。IT業界自体は、この日本でも数少ない、成長をしてきた産業であること。そして、最近は、ゲーム開発エンジニアの需要が高かったことから、これらの仕事は、ずっと募集されています。

しかし、歴史的に、プログラマーの業界ポジションは、低いです。さらに、昨今のオフショア開発の進展と、不況が続いた影響で、エンジニア一人あたりの人件費が減少していきました。結果として、ブラック企業問題も出てきたということがあると思います。「ブラック企業」の感想でも書いたように、休みなく働かしていた企業の話も知っています。

ブラック企業であるIT企業がどういうことを行っているのかについては、今野さんの前著「ブラック企業』に記述されています。他の業界の事例も合わせて、こちらを読むのがいいと思います(というか、対談を除く今野さんの部分は、「ブラック企業』をしっかり読む方がいいと思います。詳細が具体的で参考になりまし、実際にPOSSEに相談された事項が、一番役に立つ内容だと思います。)。

今野さんは、IT業界で働いた経験がないため、IT業界の仕組みについては、関係者から聞いた形で、記述されています。それが、もう少し説明を追加しないと、IT業界の人からは、「違う!」と指摘されそうな感じです。例えば、「IT業界の仕組みは、 PM(Project Manager) → SE → PG (Programmer) のようになっている。PG から SEにといったようなことは、ほとんどないと聞いている。」といったような記述です。SEは、プログラマーをまとめる仕事という定義は、業界では、ほとんどしないので、記述するとすれば、 PM->Leader->PGでしょうか。ある程度のチーム単位でまとめるリーダーがいて、それらを統括するのがPMです。

さらに、実際は、1次、2次、3次と下請け構造がある中で、ヒーラルキーがあるので、もう少し複雑です。ただ、このあたりの記載を詳しくすると、かなり業界特化した中身になるので、一般書では、シンプルにしないといけなかったのでしょう。

常見さんの章は、いわゆる伝統的なIT企業と、ネットサービス、ウェブ系の企業をきちんと分類した上で、記載されているので、この分野のプロなのがわかります。伝統的なIT企業(SIとかを中心にした企業)は、企業向けビジネスが中心なので、一般の大学生には、認知度が低いなど。そして、大手IT企業は、しっかりした企業が多いということや、ワークスアプリケーションのような社員満足度の高い企業による施策なども取り上げています。また、残業が多くなる理由として、顧客の対応の問題があり、IT企業に起因しないことも取り上げられています。そのため、IT企業に就職したい人には、参考になるところも多いです。

いい会社で働けば、従業員満足度の高い企業も多い産業だと思います(ブラック企業はいるけれど、それがメインの産業ではない)。

本書では、PGからSE, PMに企業を変わって、移動していく人は少ないとあります。数が多いとは思っていないのですが、ないわけではありません。比較的、他の産業に比べて、流動性が高いため、いろんなキャリアパスを取ることもできます(ぼくは、大手外資系企業勤務なので、少し特殊ですが、R&Dエンジニア→マーケティング→経営企画→全社プロジェクトリーダー→マーケティング→独立というパスをたどっています)。

ブラック企業問題には、法的な整備、労働基準局や組合、弁護士、支援団体などなどいろいろと対応があります。それらは、それらで、進めていくと同時に、自分自身でも、対応していかないと行けないのでしょう(相談できるという知識を持つことだけでも、知っておくことは大切。相談もできずに、大変な状況になっている人も多い気がします)。

しかし、すべての人が、同じことをできるわけではありませんが、常に自分でオプションを選択できるようにしておくことが大切だろうと思います。そのためには、エンプロアビリティ(簡単に言えば、どこでも飯を食える力)を、個人が持っておくことも、必要でしょうね。