Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

AWS Summit Tokyo 2013にいってきた: アドテクやら、転職やら。。

先週、今週とひさびさに参加したいITイベントがあったので、参加してきました。

1つは、Linux Foundation というLinux普及を行っているNPO主催「LinuxCon Japan 2013」。もう1つは、 アマゾンデータサービスジャパン主催、という会社名より、Amazon Web Services といったほうがわかりやすい「AWS Summit Tokyo 2013」。

LinuxCon Japanは、急用が重なり、参加できたのは、金曜日の午後だけという悲しい状態でした。Linuxの生みの親リーナス・トーバルズが2年ぶりに来日講演したので、記事も多かったですね。

AWS Summit 2013の方は、1日ですが参加できました。全部見ているわけではないので、雑感を。

デジタルマーケティング系セッションとエンタープライズIT系セッションが同時開催されるという日本では、ほとんど見られない構成でした。エンタープライズIT関係は、ぼくの仕事領域であるので、情報はおおよそわかるので、今回は、デジタルマーケティング関係を中心に見ました。

デジタルマーケティングは、この数年大きく盛り上がっている広告関係の話です。ご存じのように、インターネット広告が、昔からある新聞/雑誌/ラジオなどを抜いて、テレビ広告に次ぐ国内2番目に大きな市場となりました。当初は、バナー広告中心だった広告手法も、オーバーチュア(Yahoo!)、グーグルの登場によって、検索連動型広告が花開いて、さらに、さまざまな広告手法が開発されています。

インターネット広告が成長するにつれて、テレビや雑誌などの広告と大きく違ってきたことは、インターネットというテクノロジーの上に成り立っていることに起因することです。それは、広告手法が、最新のテクノロジーを活用したいろいろな手法が成長していること。わかりやすいものでは、検索した「単語」に基づいて、関連した広告を表示する検索連動型広告です。検索エンジンというテクノロジーとそれをひもづける広告というテレビや雑誌広告では実現できないものです。

これらの広告を実現するテクノロジーを、アドテク (アドテクノロジー)ということで、最近、非常に盛り上がっています。これらのテクノロジーのほとんどは、IT技術を元にして構築されていますが、従来のITコミュニティーとは、少し離れたコミュニティとなっています。

広告を出すのは通常、企業が中心になるので、その領域に絞ります。従来の企業向けIT業界は、企業の業務システムのIT化(コンピューター化)することで、生産性向上をしていくことを支援していくということが中核ビジネスでした。そのため、多くの場合、企業の情報システム部門をメインの窓口にして、ビジネス展開を行います。企業の情報システムは、昔から、そして、まだまだ多くの企業で、経理・総務といったバックオフィス系部門に属していることが多いです(ウェブなどの情報を見る限り、ソーシャルゲームのグリーのような新興企業でも、情報システム部門は、経理/総務に属しているようです)。

この領域では、ITを活用する目的が、効率化・生産性向上に焦点があたることが多く、結果として、ビジネスを伸ばすためのITというよりも、コスト削減を実現するITという位置づけが多くあります。

一方、企業でビジネスを伸ばすために、広告/宣伝を中核にして引き合いを作っていく場合には、マーケティングや宣伝部などが中心となり、広告代理店をメインのコンタクト先として、活動を実施していくことになります。多くの場合、マーケティングや宣伝部などは、大きな企業では、バックオフィス部門である経理や総務とは違う事業部(カンパニー)に属しています。インターネット広告が高い効果を生み出すにつれて、その分野に強い広告代理店(サイバーエージェントなどもこの領域からスタート)や、それらと関係の強いウェブ開発や、クリエイティブデザインなどを行う企業などが成長し、お客様(企業のマーケティングや宣伝部)の要望を満たすために、インターネット上に新しいテクノロジーを応用した広告手法を次々に生み出している状況です。

このような成り立ちの背景から、従来の企業向けITコミュニティと、新興のアドテクノロジーコミュニティは、それほど交わることなく、国内では、イベントなどが開催されています。

そのため、AWS Summitのように、企業向けITセッションと、デジタルマーケティングセッションが混在したイベントは、非常に貴重です。

昨日のAWS Summitでおもしろかったのは、株式会社フリークアウト社のAWS導入事例でした。AWSそのもの機能の活用方法がおもしろいというよりも、個人的に気になったのは、この手のシステムは従来型のIT構築手法では、実現できないだろうということです。


株式会社フリークアウトが行っている広告事業についての詳細は、ぐぐるとたくさん情報あるので見てもらった方がいいです。

一般の人がわかりやすい例を使えば、株式市場のようなことを、広告プラットフォームで実装しているということでしょうか。株式市場では、市場の運営者(東証など)が場を提供して、株を売りたい人と、株を買いたい人をマッチさせて、株を売りたい人は、できる限り高く、株を買いたい人は、できる限り安く買いたいという意図を持っています。この取引は、昔は仲買人を通して、その後、インターネット取引も始まりました。現在、株価が乱高下する理由の1つと報道されたものに、高速取引が実施できるようになったからというものがあったのを覚えている人多いでしょう。この高速取引を実現するためには、場を提供する株式市場のITシステムだけでなく、その市場に接続されるネットワークの高速化、さらに、売買を実施する証券会社システムの高速化が必要です。その高速化には、CPUやストレージの高速化といったインフラITテクノロジーの進化だけでなく、アルゴリズム取引といったアプリケーションの進歩も必要でした。

では、広告プラットフォームではどうなるかというと。広告枠をできる限り高く売りたい媒体と、広告枠をできる限り安く買いたい広告主が、オークションのような仕組みで、売買を繰り返すことになります。広告を見るのは、ユーザーですから、そのユーザーがフラストレーションを感じるほど遅く広告が配信されることは、許されません。そのため、オークションが始まりクローズし、その媒体サイトに広告を配信することをできる限り高速化しないといけません。株式市場の取引と同様の進化が、ここで発生します。CPUやストレージの高速化といったインフラITテクノロジーの活用と、アルゴリズム取引といったアプリケーションの開発です。さらに、株式取引と違うのは、購入した広告枠に広告を配信するアクションが発生します。配信を高速化するためのテクノロジーが必要となります。


これらのプラットフォームを実現するのは、時間をかければできますが、インターネット広告の進歩が早い状況下では、時間をかけてられません。また、市場が成長中のため、新しい取り組みが必ずしも成功するとは限らないため、最初のスタートは、小さく行いたい(投資規模をコントロールしたい)ことがあります。それらを実現するには、従来型のエンタープライズITシステム開発手法のように、導入設計実装運用まで時間がかかる方法は、よくありません。また、ハードウェアやソフトウェアを必要十分なほど最初から購入するという手法も、取りづらいです。それらを考えると、今回のAWSを活用したシステムが、理にかなっていることがわかってきます。

スタートスモール(最初は小さく)、スケーラブル(必要に応じて拡大でき)、広告の配信も含めて高速であることを実現することです。

この分野でのアプリケーション開発は、株式取引アルゴリズムの開発のようなタイプなので、スキル的には業務アプリ開発プログラムとは違う分野だと思います。この10年で、US株式市場、証券会社には、数学科出身の人が多く就職しました。広告オークション取引のアルゴリズムは、おそらくこの手の方々に向いている分野じゃないかと想像します(内部を十分に知らないので、想像。。)

また、インフラテクノロジーについては、スキルがあって、新しいことが好きなエンジニアだったら、大丈夫だと思います。株式市場、証券会社には、LinuxConで事例講演がよくあるように(NY証券取引所やマーカンタイル取引所)、オープンソース、Linuxがシステムの中核ということもあり、特に、Linuxエンジニアがすごく就職しました。グーグルのように、広告分野でのテクノロジーを必要とする企業も、多くのLinuxエンジニアを採用しました。

日本では、エンジニアの文化に、広告関係の仕事に対して、すこしヘジテーションがあることも多いのですが、今後の成長を考えれば、この分野に進んでみることもおもしろいと思います。

あ、AWS Summitイベント会場もろもろの感想を最後に。クラウドといえば、メディアによく出てくるのはセールスフォースです。セールスフォースは、決算発表を見てもわかるのですが、すさまじく広告費用を使っています。売上比率でみれば、おそらくIT業界で一番広告費用を使っている企業の1つのはず。そのため、セールスフォースのイベントは、会場設営、配付資料、スタッフの配置など隅々まで、お金がかかっているのがわかります。一方、AWS Summitのほうは、とても、シンプルです(今までの経験から、どれくらい費用がかかるかということは、想像できるますが。。)。 とても、質実剛健なイベントでした。個人的には、たまたま昨日の午前中に、考えていたソリューションがAWSで実現できないかと考えていたところだったので、元同僚のアマゾンのスーパーなコンサルタトである 荒木さんが、無料相談ブースを構えていたので、相談できたのがよかったです。簡単な内容だったので、詳しく人に聞くのもはばかれるので、簡単にブースで相談できたのはよかったです。

最後に、それにしても、また、1人、元同僚が、アマゾンに転職していて、現場で挨拶されました。本当に、シリコンバレーの父である前職の会社は、人材輩出企業です。。