Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

[感想] 原発と政治のリアリズム (馬淵 澄夫 著) - チーム馬淵の記録

民主党政権で、国土交通副大臣・大臣を歴任した馬淵澄夫氏の著作。主に、震災後の原発担当者として活動した内容をできる限り、紹介した新書です。

馬淵さんは、横浜国立大学工学部卒業後、建設会社に入社し、上場企業取締役を経て、2003年衆議院議員初当選。あの逆風の年末の選挙を選挙区から当選した方です。

原発問題が急激な悪化を見せる中、急遽、細野氏に携帯で呼び出されて、内閣総理大臣補佐官として原発事故対応にあたる説得をされるところから、始まります。

震災当初は、閣外にいたために、メディアを中心にした情報しか接していなかったそうです。与党の役職者としても、実は、情報をきちんと共有されていなかったことがわかります。ご本人は、大臣を辞めなくてはいけなかった経緯から、内閣への復帰に躊躇しますが、この一大事ということで、活動を開始します。

国交大臣時代のチーム馬淵(官僚の方々)を中心に対策チームを作り上げていくところは、ある意味、映画のような展開です。一部抜粋すると。

彼ら(←チーム馬淵の官僚)にとって、この仕事は決してキャリアにはつながらない。突発的に設けられた任務など、官僚のキャリアとして何のプラスにもならない。省庁の中でなく、内閣官房に属する「首相補佐官秘書官」という肩書きも出世の役には立たないのだ。
それにもかかわらず、仕事のプレッシャーは通常業務とは比較にならない。自分たちが何かを見過ごし、誤った判断をすれば、国中を巻き込む惨事となる。私自身、その不安とプレッシャーの重みは想像以上だったし、それは彼らも同じだったろう。彼らの不安と不満と疲労を毎日ひしひしと感じていた。
仕事を進めていく過程では、「いったい何年かかるんだろう」「もうこれ以上止めるのは無理かもしれない」といった弱音が飛ぶこともあった。そんな時は一緒に食事をしながら、彼らを励ました。重圧を振り払うように、皆でとにかく全力で走り続ける、という毎日だった。
今でもある秘書官が、「この得体の知れないモンスターに打ち勝ちたい」といったことを強く覚えている。何としてでも倒すしかない、と彼はそう言った。国家の危機を前に逃げることは許されない。これは原発対応にあたった全ての人間が持っていたであろう使命感であり、脅迫感でもあった。


元々がビジネスマンであり、取締役を経由していることもあり、現場から、経営まで経験している方です。そのため、本書で再三述べられているように、民主党政権の最大の欠点の1つが、「マネジメント能力の欠如」ということを指摘しています。副大臣・大臣・原発対応補佐官での活動から考えても、重たい言葉です。これは、政権交代当初から、多くの有権者が感じている点でした。

最悪のシナリオ(首都圏すべてが避難地域になる)を前提にした対策チームでの活動などを含めて、最近になってから、公になったことを、当事者として、振り返るところが、一番の読み所です。そして、冷却停止発表を含めて、当時の政権運営に対して、批判をしています。補佐官として、統合本部にいても、「メルトダウン情報などが共有されない」という怖い話もでてきます。

民主党政権を批判する方も多いですが、これはこれ、あれはあれです。当時の内部いた責任者としての記録として、読むといいと思います。