Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

【感想】ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(今野 晴貴著)

2012年年末に発売当初から話題になり、とうとう7万部を突破したという本書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』は、NPO法人POSSE代表 今野 晴貴 氏の著書。


ブラック企業という言葉が、徐々に浸透してきましたが(浸透していいのかという問題があるけど)、いったい、どのような企業なのかということが、わかりにくい人も多かったはずです。単に、労務が厳しい企業ということというなら、昔からあったじゃないかという指摘もあるでしょう。

本書の内容が、説得力を持つのは、今野氏が、大学在学中から、1500件を越える若者の労働相談にのってきた多くの実例を元にした議論が展開されるからに他なりません。

これらの企業の特徴の1つは、大量に社員を採用し、大量に「辞めさせる」のではなく、自主的に「辞めてもらう」ことを、ある意味、ものすごくシステマチックに、全社的に実装していることでしょう。その社員を選別し、自主退職に追い込む手口が具体的に描写されていてる。

会議室で長時間の反省を求めたり、他の従業員と違う服装での勤務(スエット上下など) をすることで、従業員を追い込んでいく事例は、かなり驚くことも多いです。

今回取り上げられる業種に多いのが、サービス業とIT企業。IT業界に長く勤めた経験から、言えることは、ブラック企業に位置する企業は、多くはありませんが、ないわけではありません。ぼくの知人での事例では、1年間休みがなかったとかいうことを聞いたことも、時々あります(これが、本人がわかっていても、やめられないというか、出勤をやめないのですよね。なにか洗脳されているような感じです)。本書の事例にある企業は、常駐サービスやソフトウェア開発の受託サービスだと思います。これらの企業が、どんどんと伸びているということですが、これは、発注するサイドの問題も大きいと思います(ぼくは、発注していたサイドでつとめていた経験からでは、だいたい、企業の噂は、常駐系だと社員からもれてくるのですが。。)

こちらのセッションで紹介されていた企業「エンジニアサポートCROSS 2013「クラウドな働き方 x 介護」と陰湿な社会にならないために」や、こちらの 「最も働きがいのある米国企業トップ100社」発表:1位は2年連続グーグル社 エントリにもあるように、IT業界全体を見ると、働きがいのある企業やブラックではない企業は多いです(国内も同様)。こういう働きがいのある企業が、伸びてることで、ブラック企業が、大量に社員を採用したくともできないという経済環境になれば、このブラック企業モデルも、存続が厳しいと思っています。

(よくある若者批判の「すぐやめるのは根性がない」議論をする人にも読んで欲しいですね。こういう企業でも長く勤めろというのかどうか)

最後に、本書は、前半部分の事例の説得力がものすごく大きいため、後半部分のブラック企業が、なぜ社会にとって、悪影響が大きいかという議論展開は、弱い感じしました。