Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

実は、鈴木敏文氏の活躍開始とスティーブジョブスの登場は同時期

先週、金曜日TBSラジオ Dig でセブンイレブンの特集がありました。

「売上3兆円突破!小売業の王者、セブンイレブンは何がスゴイのか?」http://www.tbsradio.jp/dig/sample.html
■スタジオに、「月刊コンビニ」編集者の清水俊夫さん、流通コンサルタント会社「ビリーブアップ」代表の信田洋二さん、そして、セブンイレブン・ジャパンの鈴木敏文会長に度々インタビューをしてきた、ジャーナリストの勝見明さんを迎え、セブンイレブンの年間売上が3兆円を突破した背景について語っていただきました

昨年、スティーブジョブスが亡くなったことで、日本には、彼のような経営者は出てこないのか?という話題がよくでていました。ぼくは、世界的に見ても、希有な経営者として、現在活躍中の方では、鈴木敏文氏をあげたいと思います。

現在の年齢が79歳ということで、古くから活動されたようにおもわれるかもしれませんが、彼が、有名になったセブンイレブンは、日本では1973年にオープンされています。そして、スティーブジョブスのアップルが登場したのは、1976年です。つまり、ほぼ同時期にビジネス展開を開始したことがわかります。

セブンイレブンは、米国のフランチャイズ権を入手して始まった関係で、アメリカでのコンビニエンスストアシステムをそのまま導入した形態(日本創業当初のマクドナルドみたいなモノ)だと、思われることもあります。しかし、実際には、ほぼ日本オリジナルのビジネスモデルです。特に、単品管理と言われる管理手法は、トヨタのカンバン方式のと並ぶ世界的に通じる経営用語だと言われています(おそらく、単品管理という日本語でなく、SKU (Stock Keeping Unit) という個々の商品をコンピュータで管理するという手法が有名なのではと思います。)。

IT業界に衝撃を与えたのが、ジョブスであるならば、そのITシステムを最大限に活用して、ビジネス成長を実現したのが、セブンイレブンと言えるでしょう。それまでは、個々の商品レベルまで、管理されていなかった小売りシステムを、POSを導入し、単品レベル管理、そして、男女や年齢などを含めて情報を集め、ビジネスに活用をしていくということを実践しています。ITシステムの活用は、一般的に、「日本は遅れている!」 みたい意見がありますが、セブンイレブンのシステムは、世界的に見ても、先端を走っています。

2009年に、経済産業省外郭団体のIPAイベントにおいて、株式会社セブン&アイ・ホールディングス システム企画部CVSシステム 執行役員シニアオフィサー 佐藤 政行氏(セブンイレブンの元CIO) の講演資料「セブン-イレブンのビジネスとIT活用」がアップロードされているので、興味のある方は、ご覧になるといいと思います。http://www.ipa.go.jp/about/news/event/ipaforum2009/pdf/IPAforum2009_sec_sato.pdf 90年代当初には、メインフレームのようなレガシーシステムを使わないで、すべてオープンシステム (オープンソースではなくて、オープンシステム) でシステム構築されています。当時このようなシステムを(今では死語に近い)オープンシステムで構築した事例は、ほとんど例がなく当時のベンダーにとっても、非常に大きなチャレンジだったと関係者から聞いたことがあります。

2009年段階で、一店舗につき、一日約9000人、全国では、一日1247万人が利用するそうです。これらの方々のデータを商品売上げデータと組み合わせて、受発注や、新商品の開発につなげていくということは、今はやりのビッグデータ的なことを20年前から実施してきたことがわかります。これらのシステムは、定期的に巨額な投資を実施されています。その投資をムダにせず、常にビジネスの最先端で活用するビジネスモデルです。

しかし、IT投資を実施し、POSデータを活用すれば、そのままビジネスが簡単に伸びるというわけでは、当然ありません。データ分析したら、何かしらの売れ筋が見えてくるという簡単なものではありません。別に、私たちは、コンビニで商品を買うときに、「どうして、この商品を選んだのか?」ということは、店に伝えることありません。つまり、買ったという事実はデータにありますが、「なぜ」買ったというデータはありません。

鈴木さんの有名な言葉を引用しましょう。

どんなに量が出た商品でも、それは昨日までの売れ筋でしかない
我々は売り手の発想で、どれが一番多く売れたかに関心が向きがちです。量で見るのが一番楽だからです。しかし、どんなに量が出た商品でも、それは昨日までの売れ筋であって、明日の売れ筋ではありません。POSデータを見るときは、売れた時間(期間)と残った在庫の関係から顧客心理を読まねばならない。そこまで踏み込んではじめて、生きた数字になる。http://systemincome.com/13222

データを分析するときに、よく犯してしまう、ありがちな誤解というか、注意点をすごくついていると思います。過去の売上げ実績をものすごく綿密に分析することをしがちなのが、事業計画をつくる人には、よくあることです。年末のNHKドラマ坂の上の雲で、児玉源太郎総参謀長が、乃木希典の参謀たちに向かって、「君たちは、過去の専門家かもしれないが、未来の専門家ではない」という言葉をしゃべっていましたが、そんな感じかもしれません(この言葉はドラマの言葉)。明日のビジネスを見ないといけないということでしょう。

そして、この顧客心理については、かなり、はっとする言葉もあります。

顧客第一主義とか顧客志向を言い換えるとどうなるのか。何ごとも“顧客のために”と考えることと思いがちだが、そのときはたいてい、顧客とはこういうものだと決めつけをしている。本当に必要なのは、常に“顧客の立場で”考えることです。http://www.earth-words.net/human/suzuki-tosihumi.html

お客様第一主義というときに、「お客様のために」というのは、正しくないよという言葉です。この言葉はかなり深いと思います。顧客のためにというのは、一見正しそうに見えるのですが、「私たちが、お客様のために、何かしてあげる」というような上からら目線的なものがないとはいえません。顧客の立場から、何が必要かと言うことを徹底しましょうということだと思います。同じような言葉に、サントリーが社内用語で使っている『買い場』というものがあります。通常は、『売り場』です。『買い場』というのは、「お客様が買う」場だから使用しているそうです。「売る」というのは、自分たちから見た視点だということで、顧客視点で「買い場」で活動しようということそうです(以前、古巣にサントリーの経営企画の人をお呼びし、講演していただいたときに知りました)。

日本では、製造業の経営者が、他の業種よりも1つ上に見られる傾向があります。しかし、セブンイレブンは、日本人の生活様式を変えた大きな出来事だっただけでなく、鈴木氏は、世界的にも有名な経営者の一人となっています。

鈴木敏文氏は、かなり多弁な経営者の方ですので、大量に書籍もでていますので、興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか?
(と書きながら、ぼくは、鈴木ファンではないので、あんまり読んだことはないのですが。。。)