Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

2012年第二四半期サーバー市場動向ー不況の影響続く

9月25日に調査会社IDC Japanから、2012年第2四半期の国内サーバー市場動向が発表されました。
ワールドワイド、EMEA(ヨーロッパ・アフリカ)、国内市場をそれぞれ見てみます。

  • 市場全体の売上、出荷台数
出荷台数 出荷金額
ワールドワイド 3.6%減 4.8%減
EMEA 5.3%減 11.6%減
日本 31.9%減 18.5%減

ワールドワイドでは、出荷台数 3.6%減、出荷金額 4.8%減となり、3四半期連続で、市場が減少しています。よくない状況が続いています。ヨーロッパは、財政危機以降、減少しています。
国内市場は、昨年京コンピューターの出荷がされたことと、震災復興での出荷反動があるようです。国内のGDP推移が、春以降よくないので、年末にかけて、苦しい環境が続くと思われます。

新興国も、調子がいいわけではないため、全体として、不況の影響が大きく出ています。

  • OS動向

OSごとの状況では、最近の傾向と同じく、Linuxが伸び、Windowsがそこそこ伸びて、UNIXが大幅減となっています。

出荷台数
Windows 0.3%増
Linux 1.7%増
UNIX 20.3%減

Linuxは、最近の傾向と同じように、クラウドとスパコン(HPC) システム用での採用が堅調となっています。クラウド化が進めば進むほど、Linuxシェアが上がるという状況になっています。
Windowsは、Windows Server 2012が出荷され始めましたから、年末に向けての動向を見たいと思います。
UNIX市場では、IBMも売上を10%落としています。しかし、他社がそれ以上に売上を落としているために、UNIX市場のシェアは、6.1%上昇とあります(トータルシェアがでていないので、トータルはわかりませんが、この数年はシェア一位)。HPとオラクルとのItaniumを巡る訴訟の反動かもしれませんが、オラクルは、自社のOS(Solaris)自体のシェアが激減している状況です。裁判の結果、HP-UX版のオラクルデータベースも、次のバージョンについては出荷されることも決まりましたので、UNIX市場も少し安定を取り戻すでしょう。そのため、IBMのひとり勝ちからは、状況がかわるかもしれません。

  • ベンダー動向

グローバル

ベンダー シェア(売上) 昨年同期
HP 29.6% 29.6%
IBM 29.2% 30.3%
Dell 16.0% 14.4%
Oracle 6.0% 7.1%
富士通 3.9% 6.4%


サーバーベンダーシェアは、HPとIBMが首位(この差は、統計上の誤差の範囲で同率首位ということだそうです)。以下、DELL(売上5.9%増),オラクル(売上20.1%減)、富士通(売上42.1%減)。オラクルの急激な売上げ減少は、止まりません。おそらく戦略的に、もう売上げを伸ばそうとはしていないのだと思っています(単独サーバーよりも、アプライアンスサーバー中心にする方針かなと)。また、富士通については、京コンピューターを昨年同時期に出荷しために、今回は売上が大きく下がっています。そのため、ビジネス全体を見るときには少し割り引た方がよいです。例えば、京コンピューター出荷の影響のないヨーロッパアフリカ市場でも、同じく
売上げは減少していますが、他社も減少していて、市場シェアは5%と、前年同期比で維持しています。国内市場動向のプレスリリースを見るとわかりますが、京コンピューター出荷の影響が多大だったということがわかります。

国内

ベンダー シェア(売上)
富士通 23.5%
IBM 18.8%
HP 17.5%
NEC 15.8%
日立 9.8%
DELL 4.8%

ワールドワイドとEMEAと比較すると、「え!」と思う人がいるかもしれません。ワールドワイドでは、すでに3強(HP,IBM,DELL) の時代が長いのです。しかし、日本はそういうわけではありません。富士通は、本国のためシェアが高いことはいうまでもありません。世界でもトップ5ベンダーですし、ヨーロッパに行くと、富士通の存在感は結構大きいです(先月ヨーロッパ訪問したときの印象もそんな感じ)。国内では、それに加えて、世界でトップ5に入っていないNEC,日立が登場します。DELLについては、シェアが5%にも達していません。DELLの主力が、x86サーバーのため、他社に比べると、低価格製品が多いため、出荷金額別では、シェアが低くなります。出荷台数ベースでは、もっと上位になっているはずです(プレスリリースには出ていないで)。オラクルにいたっては、6位にさえ登場していません。90年代後半のITバブルのときは、市場を席巻したSUNサーバーですが、時代の流れを感じます。

クラウドのプラットフォームとして利用されることが多い、x86サーバー (外資系は、x86サーバーと表記し、国産系は、PCサーバーと表記しています。海外では、x86サーバーの表記が一般的だと思います) では、日本HPのウェブサイトを見ると、HP ProLiantがシェア1位(市場シェア26.4%)だそうです。


EMEA

ベンダー シェア(売上) 昨年同期
HP 38.9% 38.4%
IBM 27.2% 29.7%
Dell 13.4% 11.4%
Oracle 6.7% 8.3%
富士通 5.0% 5.0%
  • まとめ
  1. 全世界的な不況の影響は、継続中。
  2. Linuxは、おおむね堅調に増加中
  3. Windowsは、ほぼ堅調
  4. UNIXの減少は止まらない
  5. HP/IBM/DELLの3強時代続く

グローバルでは、景気の不透明感が続く状況ですので、ユーザー企業の投資は、厳しいと思われます。そのため、サーバー市場は、まだまだ苦しい状況が続くと思われます。国内も、ニュースにあるように、震災復興費用が消化できていない状況ですので、息切れ状態でしょうか。円高も続いているので、製造業の投資が弱くなるため、こちらも、マイナス要因です。



Worldwide Server Market Revenues Decline 4.8% in Second Quarter as Market Demand Softens, According to IDC

EMEA Server Revenue Down 11.6% in 2Q12 as Demand for Servers Deteriorates in Western Europe and Remains Soft in Middle East and Africa, Says IDC


2012年第2四半期 国内サーバー市場動向を発表
(2012年9月25日 IDC Japan株式会社)

  • 市場規模は、前年同期比マイナス18.5%の1,045億円。出荷台数は、同マイナス31.9%の13万3千台。前年同期の「京」と震災の影響による反動
  • 富士通が首位、IBM、HPが続く。富士通は、RISCサーバーが貢献
  • ビジネスサーバーとメインフレームは金融業向け、IA64サーバーは通信業向けの出荷が好調でプラス成長