Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

OSC岩手(4/21)と『偏差値40から良い会社に入る方法』感想

今月、岩手県でオープンソースカンファレンスが初開催されることになりました。東北での開催は、大規模な開催になる仙台市、中小規模での開催となった福島県会津若松市にに続いての3つ目です。

■4月21日(土) [岩手] オープンソースカンファレンス2012 Iwate
https://www.ospn.jp/osc2012-iwate/

今回は、岩手県で開催されるということもあり、セッションとして、震災関係があります。また、オープンソースとはどういうもの? といった初心者向けのセッションがあります。今回、アイキャリ (IT業界のキャリアデザインを支援する会) https://www.facebook.com/carrierdesign として、IT業界への就職・転職に対するセッションを持つことになりました。

これにあわせて、さらに勉強ということで、本を読んでいます。その中で、興味深かった本を1冊紹介します。『偏差値40から良い会社に入る方法 田中 秀臣著
です。


田中先生は、上武大学教授で、日本経済思想史、日本経済論を専門にされています。この10年は積極的にマクロ経済政策について、積極的に論陣をはっていることをご存じの方もいるはず。ぼくは、何冊も著作を読んでいたこともありましたし、昨年(起業後で、まだ仕事がそれほどなかったので)、田中先生も登壇される経済関係のトークイベントに参加したりしたこともありました(エエ声度でいえば、論壇界1位な感じに渋く響く声をお持ちです)。しかし、シューカツ関係の本書については、自分にとっては、守備範囲外ということもあり、手には取っていませんでした。

で、読んでみた感想。

「この本、イイです!」

田中先生は、本書のターゲットを「就職コア層(旧帝大や早稲田・慶応の文系など)」と違う大学の「文系」ということにおいていますが、「理系」でも通用すること間違いないです。

本書の特長は、なんといっても、実際の就職支援活動を10年以上にわたって実施されている先生自身の経験がベースになっていることです。例えば、学生に、毎週「入りたい企業10社」「受かりそうもないけど行きたい企業、自分の実力と同じくらいの企業、自分の実力より下の企業」といったようにリストアップさせて、それらにフィードバックをする。そんなことを繰り返しながら、自分自身の理解を深め、また、先生自身も学生に対する理解を深めていく取り組みを紹介されています。

最近、いくつかの転職関係のイベントやキャリア支援セッションで、ぼく自身も話をしたことや、一緒に登壇していただいた方も同じことを紹介されていたことをピックアップしましょう。

  • 自己分析よりも、会社をもっと知る

現在、大学のキャリア支援活動などで中核となっていることの1つが、自己分析です。自己分析をすることで、学生が、自分がどういう指向性があり、どのようなことに興味を持ち、どのような人間かを知ることで、自分とマッチする仕事が見つかるということになっています。いわゆる自分探しをしましょうということになります。
しかし、このような自己分析(自分探し)をしても、就職にはあまり役には立たないと指摘します。先生は、ご自身自身が今の年齢になっても、「自分は何者だ?」と問われても難しいと書かれているように、ぼくも、学生レベルで、「自己分析」を繰り返すことについては、「ちょっと難しいですよ」とセミナーなどで話をしています。本書では、それよりも、「もっと会社を知ること」の重要性を指摘します。

  • 親や教員の支援が必要

就職活動には、親や教員の支援が大切だと説きます。昔ながらの人だと、「親に支援得るだと、甘えるな!」とかいいそうです。ですが、まず、自分の周りで支援を得られるであろう、リソースを活用することが大切だと僕も思います。例えば、本書では、教員や大学キャリアセンターから紹介してもらって、先輩の話を聞いてみることなども推奨されています。そして、年齢が近い人の体験談は、学生自身がその体験談を自分自身に投影できることにもなるので、とても有効でしょう。企業のある程度ポジションに立つ人や人事では、あまりあからさまなことも話できないことも多いですからね(ただし、リアリティショックということで、実際の企業現場の厳しさを事前に伝えるという会社も一部にはあります。入社してからギャップが大きいと、会社を辞めたり、精神的にいい影響を会えてないこともあるからです)。

  • 「自分で考えろ」という暴力

学生のほとんどは会社で働くことがどんなものであって、また就職活動がどんなものであるのか、イメージも知識もない場合がほとんどでしょう。そういういわば白紙の状態の人たちに「自分で考えろ」と言っても、正しい答えがでてくるわけではありません。192p.

ぼくが、アイキャリを始めたときの問題意識に近い内容がこれです。今、厚生労働省、経団連、IPA(経済産業省)などのキャリア関係の資料を見ると、「自分の人生だから、自分で決めなさい。企業はそれを支援する役割です」といった趣旨で主張が構成されています。この趣旨そのものは、賛成なのです。しかし、「そのためには、自分で決めるための方法や知識が必要。そういう知識がないと、支援を得ようにも、何を支援得るべきかわからない」という問題意識を持っていました。

シュウカツ時代だけでなく、企業に入ってからも、「自分で考えろ」というのは、一見正しそうですが、「自分で考える」には、基礎的な知識がないと考えられません。コンピューターのプログラマーで言えば、一度も他の人のソースコードも見たことないのに、「xxという機能を実装しろ」と指示されるようなものでしょうか。考えるという行為は、何かのベースの知識があって、考えることができるのであって、それがない場合は、かんがえることは困難です。また、時には、覚える・教えてもらうということも必要です(極論ですが、数学で、(-1)x(-1)=1 のように、マイナスとマイナスをかけ算したら、プラスであることを考えて答えを出すことは、困難です。一定の基礎的な事柄は、覚えないと考えられません)。


ノウハウ的なものは、本書を実際に読んでいただくことの方がもちろん役に立ちます(例. 丁寧な話し方や言葉づかい、基本的な漢字の能力を身につけることが、「良い会社」に入るための大きな武器。これらは、元々勉強していないと、すぐに身につかないので、大学1年生からできればはじめましょうということなど)。
ちょうど4月から新しい生活に入った学生のみなさんにも、また、学生の保護者の方々にも、手にとってもらいたい一冊です。