Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

サーバー市場2011年第4四半期動向: タイ洪水影響大きく

先週、書きたいとおもっていたのが、ちょっと遅れで。

さて、毎回、ブログ書いている「サーバー市場動向」についてです。今回も、参考にするのは、世界的な調査会社IDCやGartnerのプレスリリース、記事などです。

 2011年全体および第4四半期(10-12月期)は、どうだったのでしょうか?

2011年全体では、売上げ5.8%増で$52.3B (5兆円弱)、出荷台数4.2%増で、830万台となりました。しかし、第4四半期は、この2年間で、初めての出荷台数の減少を記録しています。どの産業も同じですが、リーマンショック後に、大幅にビジネスが下落しています。会社によっては、30%以上の売上げダウンを記録したところもあるようです。その後、徐々にビジネスが復調し、この2年間は右肩上がりでしたが、今回は、ダウンとなっています。

このビジネス減少については、いくつかの理由が考えられます。一つには、欧州財政危機があります。ただ、現状では、リーマンショックのような規模での悪化は、まだ示していないようです。それ以上に、影響を与えていると推察されるものが、昨年のタイ洪水被害になります。タイには、大手ハードディスク(HDD) ベンダーの工場が集積しています。そのため、多くの工場が被災し、製品供給が復活していないようです。特に、この数ヶ月、大きく取り上げられるようになってきています。さらに、今年も少なくとも夏くらいまでは、戻らないではと言う予測もでています。

米市場調査会社Gartnerの予測によると、HDD業界が洪水発生以前の供給体制に戻るのは、早くても2012年第3四半期(7~9月)の終わりか、第4四半期に入ってからになるという。ストレージの価格が下落し、ベンダーから“いつでも必要なときに”供給される状態には当分戻らない。2012年は困難な運用を余儀なくされる年になるだろう」とGartnerのデータセンターシステムグループ担当副社長、ジョン・モンロー氏は警告する。http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1203/14/news01.html

地域

すべての地域や国の情報がプレスリリースレベルで公開されているわけではありません。一部公開されいてるものを引用しましょう。EMEAとは、ヨーロッパ、中東、アフリカのことをいいます。

グローバルで7.2%減少ですから、EMEA全体での減少は、少しましということでしょうか。

日本を除くアジアパシフィックですが、こちらは、こちらは、少し微妙な感じです。地域全体では、調子がよかったようです。

まだまだ成長セクターのアジア地域は健在といったところでしょう。

  • 地域全体では、15.7%成長。特に、中国は、27%成長

しかし、インド市場が、停滞している模様です。いくつかのプレスリースを見る限りは(ex. http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prIN23373712 ) 、ほぼフラットといったところです。

ベンダー状況 

  • サーバーシェアは、金額・台数ともに、IBM, HP, DELLという3強は変化なし。
  • 第4四半期は、DELL一人勝ちで 9.7% の売上アップ
  • 一年間トータルで見ると、HPだけが、マイナス成長
  • オラクル(SUN) が低迷なのは、この数年変化なし
  • 富士通が、京コンピューターの成果から前半は、シェアを伸ばしましたが、一年トータルで見ると、0.4%シェアゲインということで、大きなシェア獲得にはいたりませんでした。

今回気になるのが、HPの低迷と、Dellの躍進です。特に、Dellの(日本を除く)アジアパシフィック地域での成長は、大きいようです。詳細は、このデータだけからは見えませんが、以下のOSごとの売上をみると、Unix市場の大幅減少と、Linux市場の成長、Windows市場はそれなりということが影響している可能性が高いかなと思います。

OS状況 

  • Linuxは、HPC (一般用語で言えばスパコン)、クラウドインフラでの需要が大きくプラス成長。
  • Windowsについては、若干の減少
  • UNIXについては、10.7%という二桁の減収

 特にUnix市場については、IDCアナリストの指摘があります。

IDCアナリスト Jean S. Bozmanによれば、「UNIX市場は、景気後退前(注:リーマンショック前くらい) の市場規模には、もう戻らないだろう。IBM, HP, Oracleの競合の激化とプラットフォーム移行(注:UNIXからLinux/Windowsへの移行)によるUnix市場の溶解のために、第4四半期は市場減少を記録」と分析してます。 ここで衝撃的なのは、「UNIX市場は、もう以前には戻らない。Unix市場が溶解(erosion)」という内容です。ロイター( Washinton Postにも転載) のブログ http://uk.reuters.com/article/2012/03/16/us-oracle-idUKBRE82F0SF20120316 では、Oracle/HPの衝突は、結果として、両者のUnix市場に悪い影響を与えているということが指摘されていますし、そのとおりだと、ぼくも以前から話してきたことが結果に現れています。

今まで、メインフレーム、ミニコン、Unixx86サーバーという流れで進んできたシステムのオープン化は、とうとうオープン化の旗手であったUnix市場さえも、飲み込んで進んでいくということになります。(たぶん、40代台以下のかたがたには、Unixがオープンシステムと呼ばれていたことも知らなく、また、違和感を持つ人もいるかも知れませんが。。)

国内市場

国内市場を見ると、第4四半期は、ほぼフラットの0.1%成長でした。少し気になる点は、x86サーバー(Windows/Linux) の出荷は微減にかかわらず、IA64/RISCサーバーが昨年同期に比較すると二桁増加していることです。上記のグローバル市場とは、少し違った様相をしめしています。ハイエンドサーバー市場は、単純に景気循環の影響だけでなく、顧客システムの入れ替えや業績で大きく売上が上下するので、次の四半期の結果を見てから、判断するほうがよいと思っています。

今回、国内サーバー市場で首位に立ったIBMは、メインフレームRISCサーバー、x86サーバーなどのすべてのラインナップが好調であったとのことです。NECは、最近の決算予測と同様に、年末にかけて、きびしかったように読み取れます。

  • サーバー市場シェア (2011年第4四半期) :  IBM, 富士通, HP, NEC, 日立 
  • サーバー市場シェア (2011年トータル) :  富士通, IBM, NEC,  HP, 日立 

まとめ

国内市場だけを見ると、復興予算の執行が続いている状況から、IT投資自体は、続いていくと思います。しかし、全体的には、タイ洪水に従うHDD供給問題の影響が大きいようです。そのため、注文は入ったとしても、納品ができず、売上計上にいたらないこともでてくるでしょう。この影響は、上半期は続くようなので、ユーザー企業の方々は、サーバーを購入するときには、早めに注文しておくことが必要でしょう。HDDの供給問題は、クラウドであっても、オンプレミスでも影響は同じように受けますから。

 (詳しい市場レポートは、IDC やGartnerから、ご購入ください。引用しているプレスリリースは、原文をあってください。ぼくのコメントはあくまでも、過去の経験に基づいたもので、IDC/Gartner社の見解ではありませんです。)