Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

『MySQLはOracleに救われた』から考える大企業で働いたメリット

今日、昔の資料を整理していたら、最初のユーザー企業時代の松信さん名刺が出てきて、以下の記事を思い出しました。

この記事はいろんなところでシェアされているので、読んだ方も多いと思います。以下の部分が、この記事のタイトルに反映されています。

現在は日本オラクルから離れているものの、二度の買収のまさに渦中にいた同氏は、一連の騒動について「MySQLがSunに買われたことはタイミング的にも少し運が悪かったかもしれないと思っています。逆にOracleに買われたことでMySQLは救われたとも思っています」と、よく言われている意見とはまったく逆の見解を示している。

オープンソースに関わる話やオラクル社特有の話は、記事を読んでいただければと思います。このブログでは、ちょっと違う観点で、この「救われた」という内容を読んでみて、書いてみたいと思います。(大企業バンザイという話ではありません。働き方によって、企業規模を問わず得ることできると思っています)

  • 大企業で働くことのメリットって?

大企業で働くことのメリットとは、なんでしょうか? 多くの人は、よく口にするのが、「安定しているので失業の不安が少ない」「給与が高い」といったところかもしれません。昨今、「大企業でもつぶれることが多くなったので、失業の心配がある」とか、「給与が上がらなくなったのでよくないよ」ということは、よく聞きます。

この2つは本当でしょうか? しかし、帝国データバンクの情報をみると、実際に、倒産している企業の多くは、中小企業が中心です。

ポイント 負債100億円以上の大型倒産35件、過去10年で最少
負債額別にみると、負債5000万円未満の零細企業の倒産は5726件で、前年度比0.2%減(13件)にとどまり、構成比は49.8%。一方、負債100億円以上の大型倒産は35件と前年度比39.7%(23件)の大幅減少、過去10年で最少となった。資本金別でも資本金1億円以上の倒産が236件と、前年度の289件を18.3%(53件)下回るなど、中堅・大企業の倒産減少が目立った。

そして、中小企業の倒産の高止まりが指摘されています。

次に、給与について、調べてみましょう。

グラフから、企業規模が大きくなるにつれ、男性の平均年収が増えることがわかります(別途、気になるのは、女性の平均年収は、企業規模に関係なく、あまり差がないことです。これには、いろいろな背景がありそうです)。

つまり、巷間噂されるように、仕事の安定や給与についてのメリットについては、(特に男性は)あてはまると言えるかもしれません。

ただ、これらのメリットを強調することは、どこか、刹那的なところもあります。他にどのようなメリットがあるのでしょうか?

世界で一番大きなIT企業での就業経験、大企業、ベンチャーなど多くのベンダーとの協業経験から、次のことが大きなメリットの1つだなと思います。

  • 仕事を進めるプロセスを学べる

プロセスには、2つのものがあります。一つは、商品を販売、サポートしていく一連の活動です。もう一つは、企業の中での承認や合意を取る一連の活動です。

商品を開発・販売・サポートをするには、「いつ」「どこに」「なにを」「いくらで」販売することを決めることです。そして、販売するときは、競合に対して、何かしらの付加価値・差別化をつけることが必要です。

また、商品の販売は、簡単に時期を決めることができるわけではありません。競合から早く早くという話だけではありません。例えば、商品の価格が高い場合は、導入する企業や個人は、あらかじめ予算やこづかいを「準備」しておく必要があります。そのため、「いつ」「どこに」「なにを」「いくらで」ということをあらかじめ決定し、プロモーションしておかないと、発売開始をしても、顧客の準備ができおらず、受注に結び付きません。では、どのようにすれば、プロモーションを含めて実施できるのでしょうか? それには、商品の開発計画、製造計画、デリバリー計画、販売計画などのプロセスを整備して、大まかなスケジュールを社内で合意しておくことが必要です。そのスケジュールを基にして、営業は販売活動を進めるといったことができるようになります。

もう一つが、大きな企業で必要なことは、「さまざまな部門の人から、承認や合意を取る」ことです。大企業では、承認プロセスという形での目に見えるものと、説得や共感を得ることで、物事を進める目に見えないプロセスが混在して、事柄が決まっていきます。部門ごとに、重点をおくポイントが違う場合も多く、承認事項が大きなことになればなるほど、交渉先の部門の役割や存在意義などを理解した上で、進める必要があります。そのためには、企業の中での組織の役割というものをしっかりと理解しておく必要があります。

このようなメリット以外に、大企業で働くことのデメリットには、「官僚的」「決まりが多い」「窮屈」「なかなか物事が決まらない」などさまざまことがあります。しかし、得るものもたくさんあります。

最初に帝国データバンクの情報で、比較的大企業の倒産は少ないということは紹介しましたが、「合併・買収」や「組織のスリム化」は、この20年間ずっと継続しています。個人レベルでは、いつ何が起こるかはわかりません。

ここで最後に紹介したい考えは、最近、仕事やキャリアという問題で話題になる「就業可能性(エンプロイアビリティ)」というものです。これは、難しく説明すれば、『個人の側が組織に対して絶えず「雇用に値する自分の能力」を持ち続けるというもの』です。簡単に言えば、『どこの企業に行っても、雇ってもらえる実力を持つ』ということです。

個人レベルで、他社でも勤まるような就業能力を常に高めておくことができていれば、人事に関わる動きに翻弄されたとしても、対応できることが多くなりますし、また、雇用の流動化にも対処できるようになります。

そのためには、最初の松信さんのインタビューに戻ると、彼が述べているように勉強会などの活動が有効だぼくも思います。

定型的な業務だけをこなしていてもエンジニアの成長には限界がある。社内セミナーや勉強会を一緒に行えるような仲間がいる環境は、キャリアアップの強い支えになるだろう。

この言葉は、エンジニアだけに当てはまるわけではなく、いろんな職種に当てはまりますし、また企業規模に問わないものだと思います。僕自身も、独立してからの不安は、昔の知識と経験だけで、仕事を続けてしまわないかということです。日々努力だなぁと思います。


では。