サーバー市場動向と震災の影響
東日本大震災から、2か月以上が経過し、さまざまな経済指標や市場データが公開され始めています。
IT業界においても、あとで紹介するように影響を大きく受けている企業があります。
まず、昨日発表されたマクロ経済の動向です。
- GDPデフレーターは6四半期連続でマイナス、GDPギャップは依然大幅なマイナス(内閣府/2011.5.30)
http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2011/0530/993.html
しかし1−3月期においては、東日本大震災による資本ストックの毀損(注2)に加え、電力供給力の減少やサプライチェーンの寸断等による供給制約が、我が国の潜在GDPを一時的に押し下げたと考えられる
潜在GDPとは、「経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP」と定義されています。
つまり、今回の震災により、IT業界においては、製品供給に影響があったということが推測されます。
ちょうど同じく昨日、世界的な調査会社であるIDC Japan より、「2011年第1四半期 国内サーバー市場動向」が発表されました。
- 2011年第1四半期 国内サーバー市場動向/x86サーバーに震災の影響。出荷金額、台数ともに2桁のマイナス成長
http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20110530Apr.html
・市場規模は、前年同期比10.3%減の1,168億円。2期連続のマイナス成長
・出荷台数は、前年同期比12.6%減の14万台。x86サーバーの落ち込みが響く
・富士通が首位。IBM、HP、NECが続く。前年同期から、HPとNECが入れ替わりIDC Japan サーバー リサーチマネージャーの都築 裕之は「今期は、x86サーバーで大震災の影響があった。影響の度合いは、ベンダー毎に異なり、明暗を分けた。被災を直接受けた富士通は、大きな影響があった。他方、IBM、日立製作所は、大震災の影響は限定的であった」と指摘しています。
以下は、IDC Japan社の調査レポートを読んでいるわけではありませんので、ぼく個人の見解です(さまざまな情報を加味した調査結果を知りたい場合は、ぜひ、IDC Japan社から調査レポートを購入ください。)
今回の大震災より、特に富士通のx86サーバー (PCサーバーといわれることも多い) に影響があったことがわかります。
( 頑張れ富士通工場!)
市場全体では、年度末商戦ということで、サーバー需要が高まる時期ですが、二けたの減少を記録しています。大震災は、3月11日に発生したことから、3月末までに出荷できるサーバーベンダーへの発注の多くは、終了していると推測されます。(注: サーバーは、製造過程がそれなりの期間を要するために、注文後すぐに配送できるものは多くありません。) そのため、1−2月は順調に受注、出荷されていたが、3月に、「受注はあったが、出荷までできなかったもの」やその後の重要が減退し、出荷台数が減少を記録していると考えられます。
11日以降は、内閣府の発表にあるように、需要の減退があります。そのため、4月以降のサーバー需要は、一時的に減少している可能性があります。また、大企業のIT予算の承認は、6月くらいに実施されることから、5月の需要も低調であったかもしれません。そのため、この第二四半期も厳しいビジネス状況の可能性が高くなります。
では、次に、グローバル市場を見てみることします。IDC 社のプレスリリースを見てみましょう。
- Worldwide Server Market Revenues Increase 12.1% in First Quarter as Market Demand Continues to Improve, According to IDC 24 May 2011
http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS22841411
サマリーとしては、次のようになります。
1. サーバ出荷金額12.1%増、出荷台数2.5%増
2. 過去3年ではじめて、ボリューム、ミッドレンジ、ハイエンドの3つのセグメントでサーバ売り上げ増。
3. 全サーバ金額シェア: HP 31.5%(▼0.3%), IBM 29.2%(▲2.3%) DELL 15.6%(▼0.4%), ORACLE 6.4%(▲0.1%)、富士通 4.8%(▼1.6%)
4. UNIXサーバが復調。12.5%増
5. Linux 、Windows も好調。それぞれ、16.6%、10.1%増。
6. ブレードサーバも好調。23.8%増。シェアは、HP 50%, IBM 20.2% CISCO 9.4% DELL 8.4%
7. x86サーバも好調。12.0%増。シェアは HP 37.7%, DELL 23.5% IBM 16.4%。1台当たりの平均販売価格も増加中。
富士通のシェアが一番減少している理由が、上述の大震災に起因している場合は、次の四半期以降には、キャッチアップしていく可能性があります。しかし、今回、一度他社に流れていまった顧客が、他社サーバーを気に入ってしまった場合は、シェアを取り戻していくには時間がかかることになるでしょう。
他に気になるところは、「UNIXサーバの復調、CISCOが北米でブレードサーバの売り上げ伸ばして3位へ。オラクルやっと下げ止まり。UNIX/Linuxに比較して、Windowsは売り負け。ブレードとLinux がよかった」ということになります。
実は、Linuxサーバーには、このIDC社のデータに含まれていない、Google社が自社製造しているLinuxサーバーが含まれていません。Google社の関係者が、最近明らかにしたところによると、もし公開すれば、世界第3位のサーバーベンダーだということだそうなので、Linuxサーバーの需要は、さらに、伸びていた可能性があります。
最後に、よく話題になる仮想化ソフトウェアについては、これらのサーバー市場動向では、報告されていません。現在、世界最強の仮想化ソフトウェアを提供する企業であるVMWare社の第一四半期の決算は、以下になります。
- VMware、2011年度第1四半期の業績を発表
http://www.vmware.com/jp/company/news/releases/vmw-earnings-q111.html
• 売上高: 8億4400万ドル(前年同期比33%増)
• 営業利益: 1億5400万ドル(前年同期比50%増)
VMWare社の売り上げがすべて、サーバー用仮想化ソフトウェアの売り上げではありませんが、大まかな傾向は見てとれます。つまり、サーバー市場の成長よりも、大きな成長を記録していることがわかります。
私の次の四半期の動向の国内市場予測は、サーバー全体の出荷は大変だが、仮想化ソリューションの採用は引き続き拡大する。Windowsサーバーの復調は、他のサーバーよりも早めに発生する。UNIX/Linuxサーバーは、一時的に落ち込み、6月以降に復調していくというものです。
さて、どうなるかは、3か月後に。。。