セックスメディア30年史欲望の革命児たち / 荻上チキ 感想
まず、この新書は、エロ本ではないので、注意。
作者の荻上チキ氏は、今ぼくが最も注目する若手評論家だ。おそらく今後10年間は、彼の時代になると思っている。彼がカバーする範囲は、社会、経済、教育さまざまなものである。そんな彼が、今回取り上げるのが、セックスメディアの30年史だ。彼はちょうど30歳になったということなので、彼の人生の歩みととらえれないこともない(やたら詳しいしぃ)。
- 作者: 荻上チキ
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/05/11
- メディア: 単行本
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この本の前に、知人が編集者として出版した「エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること」(安田 理央 雨宮 まみ/翔泳社)がある。この本を読んだときと同じような感想が、荻上チキ氏の本にも感じらられる(また、本書でも安田・雨宮本は、参考書として取り上げられている)。
エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること (NT2X)
- 作者: 安田理央,雨宮まみ
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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大企業の事業の栄枯盛衰を扱った事例のビジネス書は数多い。しかし、それらは、やはり長期にわたる活動であり、一つに活動が、どうやってビジネスに結びついていったかは、単純に結びつけることができなかったりする。しかし、この分野のビジネスの動きは、ポーターの戦略論にあるような、「ファイブフォース分析」が非常にしっくりとくる動きになることだ。参入障壁が低いときは、一気に参入が始まり、また、政府や自治体の規制が変更されれば、ゲームのルールが変わるというような外部要因の変化。テクノロジーの変化による代替製品やサービスの脅威、セグメンテーション、差別化、情報の非対称性を活用したモデルなど、ビジネススクールで教えてはいるが、実際の授業では、取り上げることができない分野である。
数年前に、自動車産業の分析をしている学者が、動きが遅いので、自分の知見を確かめるために、動きの速いIT産業を使って、確かめたというようなことを聞いたことある。そういう意味において、この分野の動きは、おそらくIT産業の動きよりも、非常に大きい。そういう点から、本書で取り上げられている事例を元にして、自分のビジネスを見つめなおしてみるということも、ありかもしれない。
さて、自分の話となるが、「ポケベル」は結局持っていなかったので、結構、そのあたりの話は興味深く読めた。広末が、i-modoの前にポケベルの広告もしていたりとか。新しく知った用語では、エロ本のテープで閉じている青のものを、「慎太郎シール」という言い方をするんだというということも知った。
最後に、荻上氏が、脚注解説での「絶対に許さない」という言葉には、笑いが止まらなかった。。