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Akai's Insight & Memo

かなり小さなマーケティング会社の社長のブログ。MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長 赤井 誠。http://www.mkt-i.jp id:mktredwell

「経済とお金儲けの真実」書評とオープンソースコミュニティ、キャリアについて

この数年、よく購入するようになった経済学者 飯田泰之さんの新著 id:Yasuyuki-Iida:20110125が出たというので購入しました。

「経済とお金儲けの真実」http://www.amazon.co.jp/dp/4198630992

経済とお金儲けの真実

経済とお金儲けの真実

書評というよりは、この本の中身から、自分が感じたこと、考えたものを書いてみたいと思います。そのため、中身の流れは、実際の本の流れとは違います。

もともと「経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える」

経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える

経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える

という書籍を持っていたのですが、購入当初は、飯田さんを認識していたわけではありません。その後、TBSラジオの人気番組だった「ストリーム」でコメンテータで時折出演されるようになったのをきっかけに、興味が出て、この数年購入するようになりました(実は、1冊サイン本も持っています)。

今回の書籍は、次のような内容になっています。

 気鋭の経済学者・飯田泰之と、現役のカリスマ・バイヤー・坂口孝則という異色の2人が、経済学、現場の事実をまじえつつ、これからの日本経済でいかに儲けるか、幸福な働き方とは? 今後必須となるスキルなどを徹底的に論じ合う!

つまり、対談本です(日本では、対談本はあまり売れないという話は聞いたことありますが、この本は、どうでしょうか?)。

僕たちは、通常の活動は、坂口さんの立場に近い視点です。その視点から、マクロ経済学者としての飯田さんの話を理解するということもありますが、ぼく個人としては、社会人として、独り立ちした30代の人が考える、さまざまな視点やアドバイスが入った本だと思います。

では、気になった会話を引用して、考えてみることにします。

  • 学生にとって、食事や飲み会、次回のイベントに誘ってくれるとは

自分のゼミの学生たちには、そういうアピールポイントになるような特別な体験の機会を用意したいなと思っているんです。
シノドスでやっているイベントを見学させたり、メディア関係のパーティのスタッフをやらせたり、政治家の先生のインターンに出したりとか。そうすると中には、面白がって学生を食事や飲み会、次回のイベントに誘ってくれたりすることもあるみたい。(略)
学校帰りに友達と一緒にご飯食べるのと同じような感覚しか持てないと思しき子が多い。それはあまりに世間を知らなさすぎるだろう、と (略)
やはりそういうイベントや行事に誘ったときに、好奇心を持っている子たちのほうが、就職でも何でもうまくいくように感じます。自分で言うのもの気が引けますが、こういう機会を設けているで大学のゼミなんて、滅多にないんだけどなぁ。
(飯田)

学生に対して、機会を提供することについては、考えることが多くあります。

仕事でも、プライベートでもかかわりが多い日本最大のオープンソースイベントになっている「オープンソースカンファレンス」http://www.ospn.jp/ というITイベントがあります。このイベントでも、学生に機会を提供していこうと考えています。

企業がバックアップしているイベントでもあるので、ビジネス創出の場という意味合いがあります。しかし、それ以外にも、主催者だけでなく、地域、地方で積極的に企画実行に携わっている人たちは、例えば、学生向けのセッションを提供したり、スタッフとして学生に手伝ってもらったり、懇親会では、学生の参加費用を特別価格にしたりするなど、学生の人たちにも、積極的に、交流の場として活用してほしいと考えています。

学生にとっても、有名人や読んでいる書籍の著者にばったり会えて、雑談できるかもしれません(この本で言えば、飯田さんや坂口さんが気軽に参加していて、雑談すること可能なイベントということでしょうか) ので、いろいろな話が聞けること間違いありません。

昨今の厳しい経済状況では、学生個人レベルでできることは、限られますが、すくなくとも、自分の周辺での活動だけでなく、交流範囲を広げた活動を実施することは、プラスになることが多いと思います。IT業界は、3K職種といわれて、人気がないようなことが言われることが多いです。しかし、このようなイベントに参加する人たちと接すれば、そのような一面だけではとらえきれないものがわかります。また、技術者だけでなく、企業のマーケティングの人も参加していることが多いので、宣伝・広告だけでない、マーケティング活動の話も聞けます。プログラミングのような技術の話だと自分のPCがあれば、多くは理解はできますが、マーケティング活動などは、実務者から聞かないとわかないところがたくさんあります。(また、学生だけでなく、一般の企業で働く人にとっても、さまざまな人と交流できることは、大きなメリットがあります。)

ぜひ、興味のある方は、3月に早稲田大学で、「オープンソースカンファレンス」があるので顔を出してみるといいと思います。

(個人としては、

と題して、セッション実施します。大企業人事担当代表や実際の企業の部長をゲストしてして、話をします。詳細はまた別途。)

  • 教養に金を払え、資格に金を払うな

身につける知識やスキルの種類によっては、(お金をもらう型の) 自分を追い込む勉強か、その逆の自分がお金を払う勉強のどちらが向いているか、違いがあるんじゃないかと思います。
追い込まれたら簡単にできるようなタイプの勉強として、代表的なのは小型資格あたりでしょうか。追い込まれればそれなりに短期間で身につけられる。
(略)
対して、時間に余裕があるときに自分でお金を払ってしか身につけられない勉強もあります。それは一言でいえば、リテラシーに属するものだと思うんですよ。論理的に思考できるための科学理論や哲学といった体系的知識とか、あるいは歴史や文学といった教養にかかわる分野の習得にはこういったプレッシャーによる強制力というモデルが通用しない。こういう技能こそ自分で身銭を切って勉強する必要がある。
ところが多くの人がその真逆をやろうとするんです。(飯田)

このあたりは、議論があるところだと思います。

例えば、有名な経営コンサルタントが、大学行くよりも、企業で丁稚奉公させて、実務を学ばせろ言っています。しかし、自分に振り返って考えると、飯田さんの意見に賛成します。

学生時代に学んだことの一つに(授業だけでない)、物事を考えて、まとめることができる思考方法のようなものが多かったと思います。大学入学当初、教養の授業でディスカッションがありました。残念ながら、当初、ぼくは一言も話ができませんでした。ディスカッションの経験がないので、自分の意見をまとめられないのです。もちろん、話し方の勉強をすれば、一般的な話はできるのでしょうが、すごく上っ面な言葉になってしまいます。そして、背景となる知識、教養が十分になかったのです。スピーチはできるが、ディスカッションできないといったらいいでしょうか。

しかし、義務教育時代から勉強してきた知識を活用して、新しく学んだことを整理し、自分の思考の範囲を広げていけるようになると、話に参加できるようになりました。

自分の考えを整理するのに、意外かと思われるかもしれませんが、数学などは役に立ちました。よく「数学なんかは、実世界では役にたたない」と批判されますが、数学の思考方法は、グローバルで、どこの国でも、どの時代でも通用するものです。それは、演繹法、帰納法のような考え方は、前提から結論まで一貫したロジックがあるためです。このようなロジックは、実際のビジネスに応用するとことも可能です。企業では、ビジネスサイドの人は、ビジネスの企画をすることが多くあります。技術者にとっては、製品の仕様を決めるようなこともあります。そのときに、問題点を整理したり、提案書をまとめたりするのは、このような知識があるのとないのとでは、大きな差があると感じます。

  • 世界を相手にするために必要な3つのスキル

「世界で生き残っていくためには、どんなスキルが必要ですか?」という質問をして、3つのジェネラルスキルを聞いたことがあります。1つ目は、やっぱり英語だったので、これは当然予想がつきますね。でも残り2つが全く予想できない答えでした。2つ目は、(略) どこでも寝られる能力を身につけること。そして、3つ目が、ケンカに強いことだと言われたんです。(坂口)

ビジネスマンなので、ケンカは物理的なケンカというよりも、交渉力のことだと思います。

飯田さんは、「簿記、英語、数学、あとは統計」と言っています。
(企業実務からすれば、「統計」という単語よりも、「データ分析」といった方がいいかもわかりません。)

世界を相手にするという前提をつけ、英語はできるものと仮定すれば、ぼく個人では、「数学、データ分析、プレッシャーへの耐久力」かなと思います。ビジネスがうまくいっているときはいいのですが、状況が悪化してくると、各所からのプレッシャーが高まります。そのとき、どうやって改善するかなどの説明求められます。そのときに必要になるのは、定性的な話だけではなくて、データを十分に使った説明であり、また、改善するまで継続されるプレッシャーへの耐久力です。ま、耐久力は、ジェネラルスキルという分野ではないのですが。。。

  • ボイスとイグジット

労働者の権利を守るための方法には、ボイスとイグジットという2つの側面がある。ボイスとは、労働者たちが声を上げて要求することで、これを集約することになります。イグジットとは、要求が達せられなければ仕事を辞めるということで、このイグジットのオプションがないとボイスは効果を発揮しません。
(略)
会社にとって必要だと思われている人材が、「こんな会社辞めてやる」という脅しを行使することによって、やっと企業は労働者と真摯に向き合うようになるわけです。
p201-202/飯田

対談の流れとして、労働組合という名称がでてきますが、労働組合の存在が必須というわけではありません。今は、労働組合のない企業も多くなっています。そのため、労働組合ということは、気にせずに読むといいです。

通常、企業としては、従業員満足度調査などを実施することで、「ボイス」の集約を集めることになります。イグジットは、その企業の離職率と考えることになります。

経験上、いろいろな企業で働く人と話す機会が多いのです。従業員満足度調査に対して、真摯に対応していない企業は、離職率が高い傾向にあるようです。例えば、有名な外資系IT企業では、数年前まで離職率が20%を超えていたところもありました。そのような企業は、今、いろいろな対策をうって、離職率が半減していっているという話を最近耳にしました。逆に、数年前まで離職率が低かった企業でも、急速に高くなっているところもあります。そういう企業は、従業員満足度調査が悪いのは、自社の問題ではなく、現在の経済環境のせいだということで積極的な対応を怠っているようです。

離職率を下げる、または、上がってしまうというように、比率が大きく変化するような状況を改善するには、時間がかかります。たいてい、このような問題は、ある日突然発生するのではなく、徐々に加速度がついて進んでいきます。そのため、現状に巡航速度がかかっているために、改善するには、時間が1年単位ではかかります(1年で状況を改善し、ビジネスが好転したという成功譚を語る経営者がいますが、ぼくは信用していません。ちょっとテコ入れしたら、大の大人が、どんどんと考えが変わるようなところは、一種の洗脳に近いことでもしているのかと思います)。

IT業界は、日本の労働市場では、比較的流動性が高く、転職環境が好転すると、イグジットに加速がかかる傾向があります。そのとき、ボイスを上げずに、いきなり辞めていくことも多くありますが、少なくとも、ボイスを上げるということは、従業員は、実施しておくことがいいと思います(外資系でも、多くは匿名で実施されます)。海外では、ボイスを上げることまでは、特に問題があるわけではありません。改善する指標として使用されるので、そのあとに、改善されるといいのですから。

そのほかにも、いろいろと面白い話はありますが、ぜひ手に取ってみてください。